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新型コロナウイルス感染症を含む病理解剖について

新型コロナウイルス感染症を含む病理解剖について(2020年4月27日更新)

令和2年4月27日
一般社団法人日本病理学会
理事長 北川昌伸
医療業務委員長 佐々木毅

 新型コロナウイルス感染症に関しましては、全国医学部長病院長会議より、関係省庁宛てに、「医療崩壊、院内感染予防のため、入院患者全員に対して新型コロナウイルスのPCR検査を保険診療下で行える体制を整備すること」についての声明が提出されました。また、慶応大学病院からは、院内感染防止として入院患者全員にPCR検査を行ったところ、入院患者の約6%に無症候感染者が認められたと報告がありました(4月22日)。
 これを受け、厚生労働省は4月24日の中央社会保険医療協議会の総会にて「新型コロナウイルスの院内感染が増えていることに関連し、症状がない入院患者についても、医師が必要と判断した場合にはPCR検査の保険適用を可能とする」との方針を明らかにしました。ただし、「入院患者全員に一律に実施する場合は対象外とし、近く保険が適用されるケースを整理して提示する」ともされております。
 これらのことを鑑み、病理解剖の実施に関しては病理解剖前に新型コロナウイルス感染症のPCR検査を、原則すべての症例で実施することを推奨いたします。

<追記>
新型コロナウイルス感染者の約80%はいわゆる無症候感染者であること。また、感染力が強いウイルスであること。
感染した場合、高齢者でも発症しない者がいる反面、数は少ないながら若年、青壮年でも(基礎疾患がないにもかかわらず)症状が重症化し、稀ながら死亡する者もいること(発症者500人に1人が亡くなるともされています)。
病理解剖は基本的には、感染対策に配慮した上で全症例行っておりますが、例えば結核に関しても、他の診療科の医療従事者に比較して病理部門の医療従事者は10倍以上の高い感染率であること。
新型コロナウイルス感染症解剖に対しての感染予防策(国立感染症研究所から発出された感染予防策・マニュアル:会員専用ページに掲載)に対応している病理解剖室を有する医療機関は全国的に数カ所しかないこと。
通常の感染対策で病理解剖を行った患者が無症候性の新型コロナウイルス感染者であった場合、解剖中のご遺体からの体液等の飛散等により、例えば結膜などにウイルスが付着したり、汗などに付着したりして、結膜や口腔等を通して感染する可能性がないとは限らないこと(その場合、感染した基礎疾患がない「個体」によって、重症化する者がいること)。
患者が無症候感染者で臨床的にも感染を疑わず、PCR検査をせずに病理解剖を行った場合、病理解剖を執刀した病理医、検査技師、立ち会った臨床医の中で、複数の有症状者が出た場合には病理解剖での感染が否定できず、病理部門全体があるいは担当の診療科が閉鎖になる可能性があること(潜伏期間約5日から約14日あるため、無症状で出勤し、その後症状が出て、感染が判明した場合に、判明した時点で部門全体が濃厚接触者扱いになる可能性がある)。その場合、病理部門は病院の多くの診療科に関係する部門であり、病院の病理機能が2週間なり損なわれてしまう危険性があること(術中迅速診断、病理組織診断、細胞診断ができなくなる可能性があること)。
すでに入院患者に対して、お見舞いの禁止など外部との接触を断っている医療機関もありますが、院内感染では無症候感染の医療者から患者への感染も確認されていること(外部との接触を避けていても感染していない無症候感染になっていることが否定できないこと)。
以上

1人病理医病院等で、病理医等が濃厚接触者となり自宅待機等になった場合、病院内の病理診断が滞らないように、平成30年診療報酬改定で新たに収載された「ICTを活用した自宅等での病理診断」に関して、特例措置として規制緩和を厚生労働省に要望しております(2020年4月9日)。4月27日時点では、まだ回答をいただいておりませんが、回答が得られましたら周知いたします。
術中迅速診断検体、病理組織検体の未固定検体、細胞診検体などの感染防止対策については、こちらをご覧ください。なお、「パンデミック発生状況下における病理検体(組織・細胞)の取り扱い:CAPの指針(日本語訳)」を日本病理学会 元理事長 長村義之先生よりご提供いただきました。こちらもご参考にしてください。


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