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会報175号


1. 病理専門医資格更新について
2. 口腔病理専門医資格更新について
3. 理事会及び臨時総会
4. 平成13年度事業報告並びに決算報告
5. 定款及び定款施行細則の改訂について
6. 海外派遣事業第2回(平成12年度)派遣報告について
平成14年度 第2回細胞診講習会のお知らせ
日本病理学会認定病院の認定申請(新規)について
日本病理学会登録施設確認申請(新規)について


1. 病理専門医資格更新について

 (社)日本病理学会病理専門医資格更新の本年度該当者には,学会事務局より必要書類が送付されます。本年度該当者は,第5回(1983年)認定登 録者ならびに第5回(1987年),第10回(1992年)及び第15回(1997年)試験合格者になります。また,上記以外で更新の手続きが遅れていた 方で本年度に更新ができる準備が整った方は,事務局までご一報ください。必要書類を送付致します。資格更新希望者は,平成14年10月1日から31日まで の間に所定の手続をおとりください。

2. 口腔病理専門医資格更新について

 (社)日本病理学会口腔病理専門医資格更新の本年度該当者には,学会事務局より必要書類が送付されます。本年度該当者は,第5回(1993年)認 定登録者ならびに第5回(1997年)試験合格者になります。また,上記以外で更新の手続きが遅れていた方で本年度に更新ができる準備が整った方は,事務 局までご一報ください。必要書類を送付致します。資格更新希望者は,平成14年10月1日から31日までの間に所定の手続をおとりください。

3. 理事会及び臨時総会

 平成14年5月22日の理事会において,平成13年度事業報告並びに収支決算案,宿題報告選考要領の改訂案及び臨時総会の開催に関して審議され, 原案のとおり承認された。なお,副理事長には坂本穆彦,長村義之の両常任理事が選出された。また,臨時総会は,6月7日に東京・学士会分館にて開かれ,平 成13年度事業報告並びに収支決算報告について審議され,原案のとおり承認された。

4. 平成13年度事業報告並びに決算報告

平成13年度事業報告並びに収支決算報告が以下のとおり承認された。

(1) 平成13年度事業報告
平成13年4月1日から平成14年3月31日まで
1)

学術集会,研究会等の開催

1.

学術集会の開催

・「第90回日本病理学会総会」(於東京都・秦 順一会長)
・「第47回日本病理学会秋期特別総会」(於東京都・白井俊一代表世話人)

2. 研究会等の開催

・各支部会における「学術・研修集会」(講演会,交見会等)を開催
・病理技術講習会(於東京都)
・病理診断セミナーを2回開催(於東京都)

3. 「公開フォーラム・公開シンポジウム」の開催

・「公開フォーラム」(於東京都・「安全な医療,安心の医療─市民,医療者,行政の視点から─」)を開催
・「公開シンポジウム」(於東京都・「疾患モデル研究の戦術・戦略 ─ポストゲノム時代への視座 ─」)を開催

2) 学会誌,学術図書等の発行
1.

「日本病理学会会誌」(第90巻 第1~2号)を発行

2. 「Pathology International」(第51巻 第4~12号,第52巻 第1~3号)を発行
3.

「日本病理学会会報」(第162~172号)を発行

4. 「診断病理」(第18巻 第2~4号,第19巻 第1号)を発行
5.

「認定病理医部会報」(2001年 第1~4号)を発行

6. 「Pathology Research and Practice」を支援
3) 研究及び調査
1.

「日本病理剖検輯報」 第42輯(平成11年症例)を発行

2. 剖検記録データベースの再構築
4) 病理専門医等の資格認定
1.

病理専門医・口腔病理専門医の認定・試験の実施(於東京都)

2. 研修施設を認定
3.

平成13年度細胞診講習会を2回実施

5) 学術団体との協力,連絡
1.

他学会との会議共催および後援事業を実施

2. 腫瘍取扱い規約等を改訂
3.

英国病理学会との会員の相互派遣,学術交流を実施(於東京都)

6) その他目的を達成するために必要な事業
1.

日本病理学会奨励賞を実施

2. 会員の海外派遣を実施
3.

病理学卒前教育を検討

4. 病理診断コンサルテーションシステム並びにホームページを充実
5.

インターネットホームページを充実

6. 倫理,病理専門医制度運営,口腔病理専門医制度運営,医療業務等の各種委員会を開催
(2) 平成13年度収支決算報告
1) 収支計算書

平成13年4月1日から平成14年3月31日まで(単位円)

科 目
予算額
決算額

増 減

I. 収入の部
1. 基本財産運用収入
100,000
51,602
△48,398
100,000
51,602

△48,398

2. 会費収入
76,056,000
69,530,000
△6,526,000
正会員・学術評議員会費
32,946,000
32,195,000

△751,000

学生会員会費
50,000
30,000
△20,000
機関会員会費
700,000
555,000
△145,000
賛助会員会費
450,000
400,000
△50,000
病理専門医部会員会費
11,161,000
8,772,000
△2,389,000
3. 事 業 収 入
98,050,000
119,165,015
21,115,015
学術集会収入
58,000,000
69,341,430
11,341,430
論文掲載料収入
2,300,000
2,966,000
666,000
広告料収入
2,250,000
1,507,200
△742,800
刊行物発行収入
22,500,000
22,777,500
277,500
病理専門医制度収入
13,000,000
14,698,500
1,698,500
病理専門医部会収入
2,688,440
2,688,440
講習会収入
4,300,000
4,300,000
賠償保険事務費収入
885,945
885,945

4.

補助金収入
8,860,000
11,200,000
2,340,000

学術振興会科学研究費

8,660,000
11,000,000
2,340,000
日本医学会補助金
200,000

200,000

0
5. 雑収入
600,000
1,412,240
812,240
受取利息収入
600,000
268,720
△331,280
雑収入
1,143,520
1,143,520
当期収入合計(A)
183,666,000
201,358,857
17,692,857
前期繰越収支差額
26,084,528
26,084,528
0
収入合計(B)
209,750,528
227,443,385
17,692,857
科 目
予算額
決算額

増 減

II. 支出の部
1. 事業費
150,121,000
161,771,128
11,650,128
学術集会経費
59,750,000
71,124,834

11,374,834

学会誌発行経費
37,600,000
36,794,121
△805,879
会報発行経費
2,993,550

2,993,550

剖検輯報刊行経費
21,960,000
19,287,760
△2,672,240
病理専門医制度運営経費
10,000,000
8,836,704
△1,163,296
病理専門医部会経費
10,161,000
8,665,879
△1,495,121
支部運営経費
5,150,000
5,150,000
0
学会奨励等経費
2,500,000
1,900,000
△600,000
各種委員会経費
3,000,000
2,712,760
△287,240
講習会経費
4,305,520
4,305,520
2. 管理費
29,130,000
33,025,172
3,895,172
人 件 費
15,000,000
15,826,051
826,051
福利厚生費
1,500,000
1,706,480
206,480
交 通 費
700,000
626,880
△73,120
通信運搬費
2,700,000
3,173,819
473,819
会 議 費
1,400,000
1,393,929
△6,071
印 刷 費
2,000,000
2,732,925
732,925

備 品 費

300,000
△300,000
消耗品費
300,000

212,777

△87,223
光熱水料
270,000
248,803
△21,197
賃 借 料
2,800,000
2,573,556
△226,444
諸 会 費
800,000
713,500
△86,500
補 助 費
200,000
200,000
0
修 繕 料
100,000
△100,000
嘱 託 料
960,000
1,879,500
919,500
租税公課(消費税)
1,432,600
1,432,600
雑 費
100,000
304,352
204,352
3. その他
1,000,000
1,229,087
229,087
退職給与引当預金支出
1,000,000
1,000,000
0
学術医療基金引当預金支出
190,905
190,905
国際交流基金引当預金支出
38,182
38,182
4. 予備費 1,000,000
0
1,000,000
当期支出合計(C)
181,251,000
196,025,387
14,774,387
当期収支差額(A-C)
2,415,000
5,333,470
2,918,470
次期繰越収支差額(B-C)
28,499,528
31,417,998
2,918,470
2) 正味財産増減計算書
平成13年4月1日から平成14年3月31日まで(単位 円)
科 目
金 額
I. 増加の部
1. 資産増加額
当期収支差額
5,333,470
退職給与引当預金積立額
1,000,000
学術医療基金引当預金積立額
190,905
国際交流基金引当預金積立額
38,182
2. 負債減少額
0
増加額合計
6,562,557
II. 減少の部
1. 資産減少額
什器備品償却費
324,243
2. 負債増加額
1,000,000
退職給与引当金繰入額
1,000,000
減少額合計
1,324,243
当期正味財産増加額
5,238,314
前期繰越正味財産額
177,427,693
期末正味財産合計額
182,666,007
3) 貸借対照表
平成14年3月31日現在(単位 円)
科 目
金 額
I. 資産の部
1. 流動資産
現金預金
59,066,185
仮 払 金
207,900
流動資産合計
59,274,085
2. 固定資産
基本財産
30,000,000
その他の固定資産
特別財産
120,229,087
保 証 金
930,000
退職給与引当預金
6,300,000
什 器 備 品
88,922
その他の固定資産合計
127,548,009
固定資産合計
157,548,009
資産合計
216,822,094
II. 負債の部
1. 流動負債
前 受 金
18,318,000
未 払 金
9,311,137
預 り 金
226,950
流動負債合計
27,856,087
2. 固定負債
退職給与引当金
6,300,000
固定負債合計
6,300,000
負債合計
34,156,087
III 正味財産の部
正味財産
182,666,007
(うち基本金) (30,000,000)
(うち正味財産当期増加額) ( 5,235,799)
負債及び正味財産合計
216,822,094
4) 財産目録
平成14年3月31日現在(単位 円)
科 目
金 額
1. 資産の部
1. 流動資産
(1) 現金預金
現 金 現金手許有高
248,515
普通預金 みずほ銀行本郷支店
53,487,733
定期預金 みずほ銀行本郷支店
14,888
信託預金 三菱信託銀行本郷支店
215,909
郵便振替
5,099,140
現金預金合計
59,066,185
(2) 仮払金
家 賃
195,300
コピー機
12,600
仮払金計
207,900
流動資産合計
59,274,085
2. 固 定 資 産
(1) 基本財産
普通預金 UFJ銀行本郷支店
30,000,000
(2) その他の固定資産
1. 特別財産
学術医療基金引当預金
(普通・東京三菱銀・本郷支店)
100,190,905

国際交流基金引当預金

(普通・あさひ銀・本郷支店)

20,038,182
特別財産合計
120,229,087
2. 保 証 金
930,000
3. 退職給与引当預金
6,300,000
什器備品
88,922
その他の固定資産合計
127,548,009
固定資産合計
157,548,009
資産合計
216,822,094
II. 負債の部
1. 流動負債
(1) 前 受 金
平成14年度会費
18,318,000
(2) 未 払 金
英文誌印刷費
7,878,537
未払消費税
1,432,600
未払金合計
9,311,137
(3) 預 り 金
源泉所得税・社会保険料
226,950
流動負債合計
27,856,087
2. 固定負債
(1) 退職給与引当金
6,300,000
固定負債合計
6,300,000
負債合計
34,156,087
正味財産
182,666,007
5. 定款及び定款施行細則の改訂について

かねてから申請していた社団法人日本病理学会定款の一部変更は,平成14年7月8日付けで遠山敦子文部科学大臣から認可された。この変更内容は,平 成13年度秋期特別総会並びに平成14年度総会において既に承認されていたが,文部科学省の要請によりまとめて整理のうえ申請していたものである。また, 定款の変更及び選挙制度の改定に伴って定款施行細則の一部変更が行われた。新たな定款及び定款施行細則は,以下のとおりである。

社団法人日本病理学会 定 款

(平成11年1月7日設立認可)
平成14年7月8日一部改正

第1章 総 則
(名 称)
第1条 この法人は,社団法人日本病理学会 (The Japanese Society of Pathology) という。
(事務所)
第2条 この法人は,事務所を東京都文京区本郷2丁目40番9号に置く。
(支 部)
第3条 この法人は,理事会の審議及び総会の議決を経て,必要な地に支部を置くことができる。
第2章 目的および事業
(目 的)
第4条 この法人は,病理学に関する学理及びその応用についての研究の振興とその普及を図り,もって学術の発展と人類の福祉に寄与する。
(事 業)
第5条 この法人は,前条の目的を達成するために次の事業を行う。
(1) 学術集会,研究会等の開催
(2)

学会誌及び学術図書等の刊行

(3) 病理学に関する研究及び調査並びに知識の普及
(4) 研究の奨励及び研究業績の表彰
(5) 病理専門医制度又は口腔病理専門医制度に基づく資格の認定
(6) 内外の関連学術団体等との連携及び協力
(7) その他の本会の目的を達成するために必要な事業
第3章 会 員
(種 別)
第6条 この法人の会員は,次のとおりとする。
(1) 正 会 員 この法人の目的に賛同して入会した個人
(2) 学生会員

大学の学部学生であって,この法人の目的に賛同して入会した個人

(3) 名誉会員 病理学の進歩及びこの法人の発展に著しい功績のあった者で,理事会が推薦し,総会の承認を得た個人
(4) 賛助会員 この法人の事業を援助するため入会した個人又は団体
(5) 機関会員 この法人の目的に賛同して入会した団体
(学術評議員)
第7条 この法人に学術評議員を置く。
2 学術評議員は,申請時点において病理研究歴満7年以上及び本会に入会後満5年以上の正会員のなかから,学術評議員2名以上の推薦を得て,理事長に申請し,理事会及び総会の承認を得た者とする。
3 学術評議員は,正会員としての資格を有するほか,次のことを行う資格を有する。
(1) 学術評議員候補者を推薦することができる
(2)

常置委員会委員の被選挙権を持つ

(3) 名誉会員になる資格を持つ
(4) その他の資格については別に定める。
(入 会)
第8条 会員になろうとする者は,所定の入会申込書を理事長に提出し,理事会の承認を得なければならない。ただし,名誉会員に推薦された者は,入会の手続きを要せず,本人の承諾をもって名誉会員となることができる。
(入会金及び会 費)
第9条 この法人の入会金及び会費は,総会の議決をもって別に定める。
2
名誉会員は,入会金及び会費を納めることを要しない。
(資格の喪失)
第10条 会員が,次の各号の一に該当する場合には,その資格を喪失する。
(1) 退会したとき
(2)

死亡し,若しくは失跡宣告を受け,又は会員である団体が解散したとき

(3) 除名されたとき
(退 会)
第11条 会員が退会しようとするときは,退会届を理事長に提出しなければならない。
(除 名)
第12条 会員が次の各号の一に該当する場合には,理事会の審議及び総会の議決を経て,理事長が除名することができる。この場合,その会員に対し,議決する前に弁明の機会を与えなければならない。
(1) この法人の名誉を傷つけ,又はこの法人の目的に違反する行為があったとき
(2)

この法人の会員としての義務に違反したとき

(3) 2年を超えて会費を滞納し,催告に応じないとき
(拠出金品の不返還)
第13条 既納の入会金,会費及びその他の拠出金品は,いかなる事由があっても返還しない。
第4章 役員及び職員
(役員の種類及び定数)
第14条 この法人に,次の役員を置く。
(1) 理事 16名以上20名以内 (うち理事長 1名,副理事長 2名,常任理事 3名)
(2) 監事

2名

(役員の選任)
第15条 理事及び監事は,総会において第6条第1号の正会員の中から選任する。選任の手続きは,別に定める。
2 特定の理事とその親族その他特別の関係にある者の合計数は,理事現在数の3分の1を超えてはならない。
3 理事及び監事は,相互に兼ねることができない。
(理事の職務)
第16条 理事長は,この法人の会務を総理し,この法人を代表する。
2 副理事長は,理事長を補佐し,理事長に事故があるとき,又は理事長が欠けたときは,副理事長がその職務を代理し,又はその職務を行う。
3 常任理事は,理事会及び総会の議決に基づき,この法人の日常業務を分担処理する。
4 理事は,理事会を組織して,この定款に定めるもののほか,この法人の総会の権限に属する事項以外の事項を議決し,執行する。
(監事の職務)
第17条 監事は,この法人の業務及び財産に関し,次の各号に定める職務を行う。
(1) 法人の財産の状況を監査すること
(2)

理事の業務執行の状況を監査すること

(3) 財産の状況又は業務の執行について不整の事実を発見したときは,これを理事会及び総会又は文部科学大臣に報告すること
(4) 前号の報告をするため必要があるときは,理事会又は総会を招集すること
(5) 監事は,理事会に出席することができる。ただし,議決には加わらないこと
(役員の任期)
第18条 この法人の役員の任期は,2年とし,再任を妨げない。
2 補充又は増員により選任された役員の任期は,前任者又は現任者の残任期間とする。
3 役員は,辞任又は任期満了後でも,後任者が就任するまでは,その職務を行うものとする。
(役員の解任)
第19条 役員が次の各号の一に該当する場合には,理事会及び総会において理事現在数及び正会員現在数の各々の4分の3以上の議決により,理事長がこれを解任することができる。この場合,その役員に対し,議決する前に弁明の機会を与えなければならない。
(1) 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき
(2)

職務上の義務に違反あるいは役員たるに相応しくない行為があると認められるとき

(役員の報酬等)
第20条 役員は,無給とする。
2 役員には,費用を弁償することができる。
(職 員)
第21条 この法人の事務を処理するため,事務局及び必要な職員を置く。
2 職員は,理事長が任免する。
3 職員は,有給とする。
第5章 会 議
(理事会の招集)
第22条 理事会は,毎年3回理事長が招集する。ただし,理事長が必要と認めたときは,理事長は臨時に理事会を招集することができる。
2 前項のほか,理事現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を記載した書面をもって理事会の招集の請求があったときは,理事長はその請求があった日から30日以内に臨時理事会を招集しなければならない。
3 理事会を招集するときは,会議の日時,場所,目的及び審議事項を記載した書面をもって,少なくとも10日前までに通知しなければならない。
4 理事会の議長は,理事長とする。
(理事会の定足数等)
第23条 理事会は,理事現在数の3分の2以上の者が出席しなければ議事を開き議決することができない。ただし,当該議事につき書面をもってあらかじめ意思を表示した者は,出席者とみなす。
2 理事会の議事は,この定款に別段の定めがある場合を除くほか,出席理事の過半数をもって決し,可否同数のときは,議長の決するところによる。
(理事会の審議事項)
第24条 理事会は次の事項を審議する。
(1) 総会に付議する事項
(2)

委員会及び部会の設置及び改廃並びにその運営に関する事項

(3) その他重要な会務の運営に関する事項
(常任理事会)
第25条 理事会から委任された事項及び緊急に処理すべき事項を議決するため,常任理事会を置く。
2 常任理事会は,理事長,副理事長及び常任理事をもって構成する。
3 常任理事会は,理事長が必要と認めたときに招集する。
4 常任理事会において議決した事項は,理事会に報告し,その承認を求めなくてはならない。
5 その他常任理事会に関し必要な事項は,別に定める。
(各種委員会及び部会)
第26条 理事会の諮問と会務執行のため,別に定める常置委員会及び部会を置く。
2 理事会が必要と認めたときは,その他に臨時特別委員会を置くことができる。
(支 部)
第27条 支部の構成,運営及び支部長の選任に関し必要な事項は,別に定める。
(総会の構成)
第28条 総会は,正会員をもって組織する。
(総会の招集)
第29条 通常総会は,毎年2回理事長が招集する。
2 臨時総会は,理事会が必要と認め招集の請求をしたとき,理事長が招集する。
3 前項の他,正会員現在数の5分の1以上から会議に付議すべき事項を示して総会の招集の請求があったときは,理事長は,その請求があった日から60日以内に臨時総会を招集しなければならない。
4 総会を招集するときは,その会議の日時,場所,目的及び審議事項を記載した書面又は学会誌の公告をもって,少なくとも10日前までに会員に通知しなければならない。
(総会の議長)
第30条 総会の議長は,会議の都度,出席正会員の互選で定める。
(総会の議決事項)
第31条 総会は,この定款に別に定めるもののほか,次の事項を議決する。
(1) 事業計画及び収支予算についての事項
(2)

事業報告及び収支決算についての事項

(3) 正味財産増減計算書,財産目録及び貸借対照表についての事項
(4) その他この法人の業務に関する重要事項で理事会において必要と認めるもの
(5)
(総会の定足数等)
第32条 総会は,正会員現在数の過半数以上の者が出席しなければ,その議事を開き議決することができない。ただし,当該議事につき書面をもってあらかじめ意思を表示した者及び他の正会員を代理人として表決を委任した者は,出席者とみなす。
2 総会の議事は,この定款に別段の定めがある場合を除くほか,正会員である出席者の過半数をもって決し,可否同数のときは,議長の決するところによる。
(会員への通知)
第33条 総会の議事の要領及び議決した事項は,全会員に通知する。
(議事録)
第34条 すべての会議には,議長が議事録を作成し,議長及びその会議において選任された出席者の代表2名以上が署名,押印の上,これを保存する。
第6章 資産及び会計
(資産の構成)
第35条 この法人の資産は,次のとおりとする。
(1) 設立当初の財産目録に記載された財産
(2)

入会金及び会費

(3) 資産から生ずる収入
(4) 事業に伴う収入
(5) 寄附金品
(6) その他の収入
(資産の種類)
第36条 この法人の資産を分けて,基本財産と運用財産の2種とする。
2 基本財産は,次に掲げるものをもって構成する。
(1) 設立当初の財産目録中基本財産の部に記載された財産
(2)

基本財産とすることを指定して寄附された財産

(3) 理事会で基本財産に繰入れることを議決した財産
3 運用財産は,基本財産以外の資産とする。
(資産の管理)
第37条 この法人の資産は,理事長が管理し,基本財産及び基金のうち現金は,理事会の議決を経て定期預金とする等確実な方法により,理事長が保管する。
(基本財産の処分の制限)
第38条

基本財産は,譲渡し,交換し,担保に供し,又は運用財産に繰入れてはならない。ただし,この法人の事業遂行上やむを得ない理由があ るときは,理事現在数及び正会員現在数の各々の3分の2以上の議決を経,かつ文部科学大臣の承認を受けて,その一部に限りこれらの処分をすることができ る。

(経費の支弁)
第39条 この法人の事業遂行に要する経費は,運用財産をもって支弁する。
(事業計画及び収支予算)
第40条 この法人の事業計画及びこれに伴う収支予算は,理事長が編成し,理事会及び総会の議決を経て,毎事業年度開始前に文部科学大臣に届け出なければならない。事業計画及び収支予算を変更しようとする場合も同様とする。
(事業報告及び収支決算)
第41条 この法人の事業報告及び収支決算は,毎事業年度終 了後,理事長が作成し,財産目録,貸借対照表,事業報告書及び正味財産増減計算書並びに会員の異動状況書とともに,監事の意見を付け,理事会及び総会の承 認を受けて毎事業年度終了後3月以内に文部科学大臣に報告しなければならない。
2 この法人の収支決算に余剰金があるときは,理事会の議決及び総会の承認を受けて,その一部若しくは全部を基本財産並びに基金に編入し,又は翌年度に繰り越すものとする。
(長期借入金)
第42条 この法人が借入をしようとするときは,その事業年度の収入をもって償還する短期借入金を除き,理事現在数及び正会員現在数の各々の3分の2以上の議決を経,かつ,文部科学大臣の承認を受けなければならない。
(新たな義務の負担等)
第43条 第38条ただし書き及び前条の条項に該当する場合並びに収支予算で定めるものを除くほか,この法人が新たな義務の負担又は権利の放棄のうち重要なものを行おうとするときは,理事会及び総会の議決を経なければならない。
(事業年度)
第44条 この法人の事業年度は,毎年4月1日に始まり,翌年3月31日に終わる。
第7章 定款の変更及び解散
(定款の変更)
第45条

この定款は,理事現在数及び正会員現在数の各々の4分の3以上の議決を経,かつ文部科学大臣の認可を受けなければ変更することができない。

(解散)
第46条 この法人の解散は,理事現在数及び正会員現在数の各々の4分の3以上の議決を経,かつ,文部科学大臣の許可を受けなければならない。
(残余財産の処分)
第47条 この法人の解散に伴う残余財産は,理事現在数及び正会員現在数の各々の4分の3以上の議決を経,かつ,文部科学大臣の許可を受けて,この法人の目的に類似の目的を有する公益法人に寄附するものとする。
第8章 補 則
(書類及び帳簿の備付等)
第48条 この法人の事務所に,次の書類及び帳簿を備えなければならない。ただし,他の法令により,これらに代わる書類及び帳簿を備えたときは,この限りではない。
(1) 定款
(2)

会員の名簿

(3) 役員及びその他の職員の名簿及び履歴書
(4) 財産目録
(5) 資産台帳及び負債台帳
(6) 収入支出に関する帳簿及び証拠書類
(7) 理事会及び総会の議事に関する書類
(8) 官公署往復書類
(9) 収支予算書及び事業計画書
(10) 収支計算書及び事業報告書
(11) 貸借対照表
(12) 正味財産増減計算書
(13) その他必要な書類及び帳簿
2 前項第1号から第5号までの書類及び同項第7号の書類及び同項第9号から第12号までの書類は永年,同項第6号の帳簿及び書類は10年以上,同項第8号及び第13号の書類及び帳簿は1年以上保存しなければならない。
3 第1項第1号,第2号,第4号及び第9号から第12号までの書類並びに役員名簿は,これを一般の閲覧に供するものとする。
(細 則)
第49条 この定款の施行についての細則は,理事会及び総会の議決を経て別に定める。

附 則
1. この定款は,この法人の設立許可のあった日(平成11年1月7日)から施行する。
2. 第15条の規定にかかわらず,この法人の設立当初の理事及び監事は次のとおりとし,その任期は,第18条第1項の規定にかかわらず,この法人の設立年の翌年度の年度末までとする。
理事(理事長) 町並 陸生
理事(副理事長)(常任理事)

秦 順一

理事(副理事長)(常任理事) 森 茂郎
理事(常任理事) 小池 盛雄
理事 青笹 克之
理事 芦原 司
理事 北川 知行
理事 北村 幸彦
理事 田原 榮一
理事 玉置 憲一
理事 恒吉 正澄
理事 長嶋 和郎
理事 二階 宏昌
理事 松山 睦司
理事 真鍋 俊明
理事 森 道夫
理事 山口 和克
理事 吉木 敬
理事 若狭 治毅
監事 牛込新一郎
監事 小西 陽一
3.

この法人の設立初年度の事業計画及び予算は,第40条の規定にかかわらず,設立総会の定めによる。

4. この法人の設立当初の会計年度は,第44条の規定にかかわらず,設立許可のあった日から設立年度の3月31日までとする。
5.

この法人の設立により,従来任意団体日本病理学会に属した一切の財産及び権利義務は,この法人が継承する。

6. 従来の任意団体日本病理学会の会員は,第8条の規定にかかわらず,設立許可のあった日からそれぞれ当該会員とする。
附 則
1. この定款は,平成14年7月8日から施行する。

定 款 施 行 細 則

(平成11年1月7日制定施行,同12年4月12日一部改正,
同13年4月6日一部改正,同14年3月27日一部改正)
平成14年7月8日一部改正

第1章 会 員
(名 称)
第1条 この法人に入会しようとする者は,所定の入会申込書に必要事項を記入し,会費とともに理事長宛て提出するものとする。

2

会員の入会を理事会で承認したときは,この法人からその旨を通知する。
第2条 会員は,その主たる職場又は住居の在る都道府県により,別に定める区分によって,それぞれの支部に所属するものとする。
第3条 名誉会員は,別に定める内規により理事会の提議に基づいて総会の議を経て推戴されるものとする。
2 名誉会員に推戴されたときは,理事長よりその旨を通知する。
3 名誉会員は,学術評議員会及び総会に出席して,意見を述べることができる。ただし,議決には加わらない。
第4条 正会員,学生会員及び名誉会員は,定款に定めるもののほか次の権利を有する。ただし,前年度の会費を納入しないときは,この限りではない。
(1) この法人の主催する学術集会などに研究の成果を発表すること。
(2)

別に定める投稿規定に従って,論文その他を「日本病理学会会誌」,「Pathology International」及び「診断病理」に投稿すること。

第5条 会員は,この法人の行う各種の行事に参加することができる。
第6条 会員は,1年分の会費を前納しなければならない。
第2章 入会金及び会費
第7条 この法人の会費の額は,以下のとおりとする。
会員の種類 年 額
正 会 員
学術評議員 20,000円
一般会員

15,000円

一般会員(大学院生・初期研修医) 10,000円
学 生 会 員 5,000円
名 誉 会 員 無 料(機関誌希望者は実費)
賛 助 会 員 50,000円以上
機 関 会 員 5,000円
第8条 会費の納入は,年1回とし,毎年度3月末日までに前納しなければならない。ただし,会費に値上げ等の変動があった場合はこの限りではない。
第9条 入会金は,当分の間,納入することを要しない。
第3章 役員の選任第
第10条 役員(理事,監事)は,就任時年度内の年令が満63歳以下の者とする。
2 役員は,選挙(郵便投票)によって選出し,総会で選任する。
第11条 理事は,次の各号に定める方法によって選出する。
(1) 理事長は,選出された理事名簿(地方区選出理事と全国区選出理事)により,第二段選挙(郵 便投票)によって選出すること
(2)

副理事長(2名)及び常任理事(財務,学術・研究,病理専門医部会担当の3名)は,理事長が理事のうちから推薦し,理事会で選出すること

(3) 地方区選出理事は,各支部に所属する正会員による選挙によって選出すること
(4) 全国区選出理事は,正会員による選挙によって選出すること
(5) その他理事の選出に関し必要な事項は,別に定めること
第12条 監事は,正会員による選挙(郵便投票)によって選出する。
2 監事には,この法人の理事又はその親族その他特別の関係のある者及び職員が含まれてはならない。
第4章 支 部
第13条 この法人の支部は,北海道,東北(新潟県を含む),関東(山梨県を含む),中部(三重県を含む),近畿,中国四国および九州沖繩の7支部とする。
第14条 各支部に支部長を置く。
2 その選出は各支部に所属する正会員の選挙による。
3 支部長は,地方区選出理事となる。
第5章 学 術 集 会
第15条 この法人は,毎年春秋2期にそれぞれ学術集会及び秋期特別学術集会を開催する。

第16条

学術集会の会期は4月,秋期特別学術集会の会期は11月とする。ただし,何れの会期も時宜により変更することができる。開会期間は何れも2日ないしは4日の間とする。
第17条
2 学術集会に,会長のほか副会長1名を置く。ただし,うち1名はこの法人の総会開催地に所属機関をもつ学術評議員でなければならない。
(1) 会長は,学術集会を主催し,その運営を統括すること
(2)

副会長は,会長を補佐し,又は必要があるときは会長を代理すること

(3) 会長,副会長は,必要があるときは理事会に出席して,意見を述べることができること
第18条 次期会長は,理事会においてその候補者を選考し,総会において決定する。
2 会長の候補者は,就任時の年令が満65歳以下の者とする。
第19条 秋期特別学術集会の運営は,別に定める。
2 理事会が必要と認めたときは,その他に臨時特別委員会を置くことができる。
第6章 刊 行 物
第20条

この法人の機関誌として,「日本病理学会会誌」,「Pathology International」及び「診断病理」を発行し,「日本病理学会会誌」及び「診断病理」は,和文誌とし,「Pathology International」は,欧文誌とする。

2 「日本病理学会会誌」は,原則として年間2回,「Pathology International」は,年間12回,「診断病理」は,年間4回発行する。投稿原稿の取り扱いはそれぞれの投稿規定による。
3 この法人は,「日本病理剖検輯報」を原則として年1回発行するものとする。
4 それぞれの編集委員の選出,任期及び役割については,別に定める。
第7章 学術評議員
第21条 学術評議員の任期は,これを定めない。
2 学術評議員には,定款第19条及び第20条の条項を準用する。ただし,これらの条項中「役員」を「学術評議員」と読み替えるものとする
第22条 学術評議員会は,理事長が招集する。
2 学術評議員会の議長は,会議の都度,出席会員の互選で定める。
3 学術評議員会の運営等については,別に定める。
第8章 補 則
(書類及び帳簿の備付等)
第23条 この施行細則は,理事会及び総会の議決を経た上,定款の改正が文部大臣に認可された日から施行する。
第24条 この施行細則の改廃は,理事会の議を経て,総会で決定する。
附 則
1. この施行細則は,平成11年1月7日から制定施行する。
附 則
1. この施行細則は,平成12年4月12日から施行する。ただし,第7条の正会員の会費の額は,平成13年度会費から適用する。
附 則
1. この施行細則は,平成13年4月6日から施行する。
附 則
1. この施行細則は,平成14年3月27日から施行する。ただし,第10条,第11条及び第12条の役員の選出並びに選任については,平成16年度役員選挙から適用する。
附 則
1. この施行細則は,平成14年7月8日から施行する。
6. 海外派遣事業第2回(平成12年度)派遣報告について

社団法人日本病理学会海外派遣事業は,本学会員が病理学に関する海外の研究,教育,診療及び施設・設備等の事情視察を行う事業であり,第2回(平成 12年度)の派遣を実施した。この度その第2陣として渡米された松下 央会員から米国の病理事情について詳細な報告があったのでここに掲載いたします。

日本病理学会海外派遣事業 第2回派遣報告書

虎の門病院病理部 松下 央

訪 問 先 : Department of Pathology, University of Miami/Jackson Memorial Medical Center
訪問期間 : 2002年3月17日~3月23日
訪問目的 : 開発中の迅速病理標本作成システムの運用の見学

20年前

私が病理医として病院に勤務するようになったのは今から20年ばかり前である。当時は現在と較べれば解剖こそたくさんあったが人も設備も 小規模で,時間という観点から見るとかなりゆとりのある良き時代であった。生検や手術検体はホルマリンで少なくとも1晩十分に固定され,翌日に切り出し, 写真撮影などが行われた。もちろん検体が大きく,固定が不良であればその後さらに固定を続けた。次いで脱脂,脱水,パラフィン包埋が行われ,切除日から数 えて3日目にパラフィンブロックが完成した。それから薄切が行われ,スライドグラスに標本を貼付けてさらに1晩ていねいに伸展が行われ,結局4日目に染 色,封入が行われた。染色,封入はいずれも手作業であったため,HE以外の染色が出来上がるためにはさらに1から2日を要することも少なくなかった。結 局,病理医が標本を観察して病理診断を作成するのは生検後4,5日というのが常識であった。これは当時としてはどの施設でも行われていた極めて標準的な仕 事の進め方であったろうと思う。うまくしたもので当時はまだ週休2日制ではなかったので,週のはじめに切除された検体に限ってはその一部は何とか週内に報 告することが可能だったのである。しかし,診断する病理医の方も,患者はすぐには来院しないことが分かっているので,生検後4,5日かかって標本が出来上 がってきても,それが決して遅いとは思わなかったのである。そして病理医は腰を落ち着けてじっくりと病理診断に取り組み,報告に完璧を期したのである。こ れは私の勤務していた病院の特殊性ではなく,当時はどこもにたような状況であったように思われる。その後,自動封入装置や自動染色装置が導入され,病理報 告は若干は早まったが,画期的な改善はなかったように思う。
しかし,なぜ生検検査を受けた患者は1週間後,2週間後に来院することになっていたの だろうか。臨床医は週に1回のペースで外来診察を行っているわけではない。少なくとも週に2回から3回の外来は受け持っているはずである。また,患者の方 も出来るだけ病理検査の結果は聞きたくないから遅い報告を望んでいた,というのでもあるまい。患者は一日千秋の思いで生検結果を待っているはずである。思 うに病理診断はある程度時間がかかるもの,そう簡単には報告は出せない,あるいは報告を頂戴できないと病理医も確信し臨床医も納得し,さらには患者もそう 説明されてきたからではあるまいか。

スピード

現代の医療の最も重要なキーワードのひとつはスピード,すなわち迅速性である。病理診断結果を得るまで数日もかかるものならば,画像診断 の精度を磨き,1日にして診断を確定すべくCT, UCG, MRIなどは長足の進歩を遂げてきた。最近では共焦点レーザー顕微鏡を装着した内視鏡を用いて,生検せずに癌の組織診断を行う試みが為されている。このよ うに病理診断とは時間がかかる検査であるという前提は,一方では医療技術,画像診断技術の進歩に大きく貢献してきたともいえる。病理診断が1, 2時間で確定されるようだったら,こうも画像診断は発達しなかったに違いない。
病理医の中には,いくら画像診断や遺伝子診断が発達したところで癌 の組織型,深達度,脈管侵襲,切除断端などの判定は病理診断のひとり舞台で,ほかの検査の追随は許さないと思われる方がいるかもしれない。しかし,これも 今日の医療技術の発達の速さを見ると,単なる幻想にしか過ぎないのではないかと思われてくる。臨床医学が今後さらに発達し,組織型,深達度,脈管侵襲,切 除断端などの要素にあまり影響されない優れた治療法が出現する可能性は十分にあるだろう。そうなれば精度は少し落ちても,数日を要する病理検査よりも数時 間の遺伝子検査が選択されるのは間違いない。
以上のような次第で,私は医療現場の病理検査は既に何年も前から他の検査とのスピード競争に突入して いること,また迅速性こそが現代の病理診断に求められているクオリティの中心をなす要素であるとの確信を抱くようになった。そこでここ数年,とにかく旧来 の標本作成方法をリファインさせ,組織標本の作成に要する時間を出来るだけ短縮し,病理診断報告書作成には徹底的なコンピューター化をはかって時間短縮に 努めてきた。しかし,旧来の方法を踏襲する限り,いかに努力してもルーチンワークとしての病理報告完成は生検の翌日夕となり,これを1日以内,すなわち生 検同日にまで短縮する事は困難であった。

新しい病理技術はどこにある

現在日本で最も多くの病理検査を行っているのは,いわゆる検査センターであることは間違いない。検査センターの常勤病理医の数とそこで処 理される検体数を比較すると,最終的な病理診断報告書の作成までのすべてを検査センター行っているとは思えないが,少なくとも標本作成の段階までは検査セ ンターは自前で行っていると思われる。検査センターであれば企業としての論理が優先されるはずで,非効率を徹底して省き,しかもライバル企業に勝つために 病理報告の迅速化に必死で取り組んでいるに違いない。その中に何か新しい技術の芽でもあるのではないかと思い,八王子のS社と川越のP社の大手検査セン ター2社を同時期に訪ねてみた。
どちらの企業も全国から集めた年間数十万といわれる病理組織検体を,思いの外少ない人数でこなしていた。両社とも いかに検体間違えをしないかということにもっとも注意を払っているようにみえた。S社では検査部内での検体の移送を回転寿司のようにガイドレールに乗せて 移動させていたが,基本的には両社ともに標本の作成は標準的な方法で行っていた。検査センターの病理組織診断はどんなに急いでも4日かかる。集配に2日, 標本作成ならびに病理診断に2日である。中核の標本作成,診断の速さは私の施設と同レベルであった。結局,S社にもP社にも病理診断の迅速化については学 ぶべきものは少なかった。
数年前からマイルストン社からmicrowaveを用いた標本作成システムが売り出されていたのでこのシステムの導入も 考慮してみたが,一回に扱える検体数が少なすぎ,とてもルーチンワークに使えるものではなかった。それならば我々のところで新しい技術を開発してもよいと 思い,いくつかの企業に我々の考えている内容を伝え,技術開発の協力を求めることにした。しかし最初に電話した1社から意外な返事をもらった。現在開発中 である,と。こうしてリストアップした残りの企業に電話する手間が省けた。

マイアミへ

現在開発中であると答えたSFJ社の話では,そのシステム(RTPS : Rapid Tissue Processing System)を考えたのはマイアミ大学病理のA.R. Morales教授であり,機械は長野県更埴市で試作品を作ってはマイアミに送ってテストしているということであった。何ということであろうか。マイアミ より東京の方がよほど信州に近い。SFJ社のご好意でMorales教授の来日した機会にRTPSを用いた標本を見せてもらい,信州の工場を見学した。そ して,これは是非ともマイアミに行って実際の運用を見せてもらわなければならないということがわかった。そこに絶好のタイミングで病理学会から海外派遣事 業の候補者に選定されたとの連絡をいただいた。海外派遣候補者は3名で,私は黒田 誠先生,清水道生先生とともに候補者に選定された。黒田先生からは清水先生と一緒に米国の大学,病院を訪問しないかとの御親切なお誘いをいただいた。しか し以上のような理由で,私としては訪ねたいところがはっきりしていたので,わがままをいって単独で米国を訪問させていただくことにした。当初は2001年 10月にマイアミを訪ねる予定にしていたが,ニューヨークのテロ事件に続いた炭疽菌騒動の震源地がマイアミであったため,予定を変更して2002年3月末 に訪問することにした。
3月21日,成田からシカゴを経由してマイアミに向かった。機中にはシカゴ,マイアミを経由して南米に戻る日系人の大家族 が何組もいた。日本の景気が悪くなったので故郷に引き上げるところだという。彼らのうちの一人は,日本に4年いてだいぶ稼いだ,日本は物価が安くて住みや すいところ,500キロコンテナいっぱいに家財道具を買い込んで持ち帰るところだ,と話してくれた。今の日本からは人も資金も工場もいっせいに脱出してゆ く。将来,患者や病院の諸検査までが海外に脱出してゆかないと誰が断言できるだろうか。病理検査に関しては,セカンドオピニオンを求めるという形式をとっ て組織的に海外にオーダーされる可能性もあるのではないかと思う。途中のシカゴは雪,マイアミは初夏であった

Rapid Tissue Processing System (1RTPS)

Prof. Moralesが主催する病理部門は常勤スタッフとしては教授以外に11名の病理医,7名のレジデント,その他にリサーチユニットの研究者が数名いる。さ らに病理標本作成と細胞診に12~14名の検査技師,病理報告書のタイプなどのために数名の秘書がいる。この病理ユニットのあるキャンパスはもともとは Jackson Memorial Hospitalの発祥の地であり,今でもその中心はJackson Memorial Medical Center (JMMC) である。教授を始めスタッフの多くはJMMCのビルディングの中にいる。このキャンパスにはJMMCに加えMiami University, School of Medicineに属するSilvester Comprehensive Cancer Center (SCCC) とResearch Unit (RU) があり,さらにこれらに近接してVeterans Administration Hospital (VAH) がある。これら,SCCC, RU, VAHの病理部門もProf. Moralesが統括しており,スタッフを派遣している。患者が最も多く,したがって当然のことながら病理検査検体が最も多いのがJMMCで,ついで多い のが州内各地から送られてくるconsultation検体とのことであった。平均して1日に500件の病理組織検査を行っているという。私が見学した期 間ではJMMCの検体に限っても1日約300件であった。
ここでは1997年には87%の生検組織が受付から3日目までに報告されていた。そのう ち同日報告は0%,翌日報告は44%であった。2000年では36% が同日報告,31%が翌日報告,2001年には46%が同日報告,30%が翌日報告となった。2002年には70%を同日報告,20%を翌日報告とする目 標であるという。もちろんRTPSをフル稼働させて,ということである。現在,JMMC, SCCCでは4台のRTPSのプロトタイプが稼動中である。RTPSは標本の固定からパラフィン包埋までを行うプロセッサーである。RTPSの工程は以下 の4段階に分かれている。 ? 脱水ならびに固定 : アセトン,イソプロパノール,PEGを用いる, ? 脱水,固定操作の続き : 固定液にミネラルオイルを加えてパラフィンへの移行の準備をする, 1. パラフィン包埋前段階, 2. パラフィン包埋。これらの工程は1台のプロセッサーに設けられた独立した4槽で連続して行われ,バスケットに入れられた検体は順次自動的に次の槽に送り込 まれてゆく。このプロセッサーの特徴は工程1, 2ではmicrowave,工程3, 4ではheat vacuumを用い,おのおのの工程がそれぞれ15分で終了するように工夫されている点である。つまり,個々の検体についてみるとおよそ60分という短時 間で固定からパラフィン包埋まで終了すること,また,15分に1回の割合で新しい組織検体を補充することによって,休みなく標本作成を続けられるという大 きな利点がある。なお,バスケットひとつに15~20個の組織検査用カセットを入れることが出来る。
それではJMMCでの具体的な運用状況を1台のプロセッサーを例にとって示したい。以下はJMMCで最も活躍している1台のRTPSで処理された朝一番に届けられた検体の診断までの流れを示したものである。

7 : 30 生検検体の切り出し開始,RTPSのウォームアップ開始
8 : 21 RTPSによる固定開始
9 : 27 パラフィン包埋終了
9 : 30 パラフィンブロック作成開始,順次,薄切染色を行う
11 : 30 標本完成,病理診断開始

この間にもおよそ15分に1回,切り出しの終了した検体が20~30検体ずつRTPSで処理され,当然のことながら15分ごとに 20~30検体分のパラフィン包埋が終了してゆく。結局,午後3時までに病理に届いた検体を逐次RTPSで処理し,14サイクル,306個のパラフィンブ ロックを作成し,そのほとんどが同日に病理診断された。
染色された標本をいくつも鏡顕したがconvenntionalな方法で作成した標本との 間に問題となるような差異は見られなかった。免疫染色に関しては良好な免疫反応が得られていると思えた。特筆すべきはRNAの保存のよさであった。これは 固定時間が極めて短いことと関連しているものと思えた。また,フォルマリンを使用しておらず,固定液などの使用量が少ないため廃液処理の問題も少なくてす むと思われる。

おわりに

時々,病院に病理検査部は本当に必要なのだろうかと自問自答する。答えは分かりきってはいるものの,熱に浮かされたように経済効率を唱え はじめた病院経営者に,病院の病理のあるべき姿を考える平静さがあるだろうか。たとえば国立大学の独立行政法人化に向けた常置委員会は,大学病院での病理 検査は病理学講座の教員が併任で診断業務を行い,標本作成は外部委託とすることが提言として示されている。さらに病理検査とは特定されていないが,受託研 究制度を活用して他の医療機関からの検査を受託することも考慮したほうがよいとも述べられている。この提言がそのまま実行されると,病院は内部で標本を作 ることを止め,出来上がった標本を顕微鏡で覗くことに終始することになる。そして経営健全化のため,病理医にとっては数を稼いで1件何千円かの診断料収入 を少しでも増やすことが最優先となる。そうなると当然のことであるが,大学は病理専門医を手許にとどめることはあっても市中の病院に常勤医師として送りだ そうとはするまい。このような状況では将来をになう新たな病理学者,病理医を育てる余裕がどこにあるだろうか。いま町の病院は病理医の確保に四苦八苦して いる。しかし,提言が現実のものとなったら市中の病院から病理医はますます消えてゆくことになりそうである。その結果,検査センターあるいは大学病院に検 体が更に集中し経営改善に貢献する一方で,いざ病理医が大学を出て病院で働こうと思っても勤務場所を確保することは困難になるだろう。
私たちが市 中の病院でやっているのは業務としての病理検査にすぎない。日々の医療行為の中でその意味が十分認識され,労力に見合うだけの価値があると判断されれば病 院での病理検査業務は続くし,消え去る必然性があるならば砂浜の絵のように消えてしまうものである。我々は常に時代の要求を感じ取り,病理業務を適応させ てゆく努力を怠ることはできない。現代の病理業務は迅速性,つまり報告までのスピードアップが厳しく求められている。1時間,2時間の時間短縮に全力をあ げなければいけない時代である。たとえば移植治療後の肺炎が感染によるものかGVHDによるものか,一刻を争って治療を開始しなければならない臨床医に我 々は現状でははたして何時間で報告を戻せるだろうか。Feozen sectionではなく永久標本で3時間以内に病理報告を戻したいというのが現在の我々の目標である。これができれば,たとえ採算割れであっても病院に病 理部が存在する価値はあるのではないかと思う。

平成14年度 第2回細胞診講習会のお知らせ

平成14年度の第2回細胞診講習会(社団法人日本病理学会,担当 : 病理専門医制度運営委員会)の日程が決まりましたのでお知らせいたします。病理専門医受験資格の要件のひとつとして細胞診に関する講習会を受講しているこ とがあげられております。来年度以降受験予定の方で,未だ細胞診講習会を受講されていない方には受講されることをお勧めします。

受講者は,下記申し込み用紙にて学会事務局宛お申し込み下さい。なお,定員は原則として60名とさせていただきますが,60名を越える場合は下記6に示す基準に従って選定させていただきます。

1. 日 時 :

平成14年10月26日 (土) 8: 30~17 : 30 (第1日 : 受付,鏡検,解説)

平成14年10月27日 (日) 8 : 30~16 : 30 (第2日 : 鏡検,解説)
2. 講 師 : 堤 寛 (藤田保健衛生大学)
越川 卓 (愛知県立看護大学)
長坂 徹郎 (名古屋大学)
石原 明徳 (松阪中央総合病院)
3. 場 所 : 藤田保健衛生大学医学部・3F教室,1F実習室
(JR名古屋駅より約45分)
世話人 : 藤田保健衛生大学医学部・病理部 黒田 誠
4. 受 講 料 : 20,000円 (採用通知とともに振替用紙をお送りします)
ハンドアウト代として実費を別途徴収いたします。
5. 申込締切 : 平成14年9月20日(金)
6. 受講者の選定基準 :

1. 平成15年度病理専門医試験を受験する人
2. 平成14年度細胞診指導医試験を受験する人

1. 2. を優先とするが,それ以外の人の受講も配慮します。
7. 申込み先 : 社団法人日本病理学会事務局

〒113-0033 東京都文京区本郷2-40-9
ニュー赤門ビル4F
TEL ; 03-5684-6886 FAX ; 03-5684-6936

8. 問い合わせ先 :

〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1-98
藤田保健衛生大学医学部・病理部(世話人 : 黒田 誠)
TEL ; 0562-93-9016 FAX ; 0562-95-3761
E-mail ; mkuro@fujita-hu.ac.jp

日本病理学会認定病院の認定申請(新規)について
日本病理学会登録施設確認申請(新規)について
第25回(平成14年)の認定審査のための認定申請を下記のとおり受付けますので,ご通知申し上げます。

1. 申請受付期間
2. 平成14年10月1日より平成14年10月31日まで
申請に必要な書類

日本病理学会認定病院認定申請書 1通
認定病院認定申請書資料(付.記入要領) 1通

3. 申請に必要な書類の請求・送付先

〒113-0033 東京都文京区本郷2-40-9 ニュー赤門ビル4F
社団法人日本病理学会事務所
TEL : 03-5684-6886
FAX : 03-5684-6936
E-mail : jsp@ma.kcom.ne.jp