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第100回ドイツ病理学会への本学会員招聘派遣報告

日本病理学会の日独交流事業の一環としてこの度、笹野公伸理事、都築豊徳学術評議員の2名が第100回ドイツ病理学会に参加した。学会は2016年6月22日から24日の期間、Berlin、Alexander Platzに隣接したBerlin Congress Center において開催された(写真1)。今回の学会会長であるAachen大学Knüchel-Clarke教授(写真2)の専門が泌尿器病理であることから都築学術評議員が、笹野理事は長年にわたる日独病理学会交流に対する貢献と内分泌病理関連の国際シンポジウムの演者として招聘された。
ホテルに到着すると、部屋にドイツ病理学会のロゴをあしらったお菓子と、Knüchel-Clarke教授直筆の手紙が置いてあり、細やかな心遣いに感激した(写真3)。日本の病理学会に比較して、学会場はかなりこぢんまりとしており、参加者及び発表数も比較的少ないと感じられた(写真4)。Keynote lectureは4演題で、3演題はドイツ以外の国の講演者であった。一般演題は、口演、ポスター口頭発表はほとんどドイツ語で行われたが、ポスターの大半は英語を使用していた。演題数は少ないものの、発表された相当数は多施設、しかも複数国にまたがる症例検討であることに非常に驚かされた。複数のドイツ人参加者にその背景を伺った所、ドイツではresidentもしくはfellowship終了後、多くの若手研究者は海外(欧州内もしくは米国)に留学し、そこで国際的な人間関係を構築するとのことであった。更には帰国後もそれらの施設と関係を持ち、それにより大規模な多施設共同研究が行われているとのことであった。日本病理学会もこれにならって、若手研究者の諸国との交流を活発化し、国際化の仲間入りを推進する必要があると思われた。
学会初日の夕方に、学会場内で100周年記念行事が行われた。学会2日目の夕方に、会長招宴がBerlin Museum of Medical History of the Charité で行われた。同場所はVirchowがベルリンで実際に講義をした施設で、病理関係の歴史的な資料が供覧されている博物館である。第二次世界大戦の際の空爆で屋根が破壊され、内部も炎上したのだが、歴史的建造物として再建されたとのことである。部屋の壁にはVirchowが実際に講義を行った写真が掲げてあった(写真5)。会長招宴に中国病理学会からの参加者も見えたので話を伺った所、中国病理学会は毎年多数の海外研究者の招聘を行い、急速に国際化を進めている実情を教えて頂いた。学会3日目に笹野理事と都築評議員が講演を行った。笹野理事の演題名は Molecular pathology update of adrenocortical neoplasms in 2016で、WHOの改訂を踏まえ、原発性アルドステロン症で報告されているsomatic mutationのKCNJ5 mutationsの意義及び副腎皮質癌におけるmolecular profilingの最近の知見を講演した。都築学術評議員の演題名はGleason grading system, intraductal carcinoma of the prostate, and beyond: What is the most predictive pathological factor of patient outcome.で、ISUP2014で提唱された新しいGleason grading systemの解説及び予後因子として近年注目されているintraductal carcinoma of the prostateの臨床病理学的意義を示した(写真6)。2つの発表とも非常に好評で、多くの質疑応答がなされた。
ドイツ病理学会では国際化が非常に進んでいることが今回の参加で実感された。今後の日本病理学会の発展を考える上で、より一層の国際化を進める必要性が痛感された。


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写真1:学会会場であるBerlin Congress Center

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写真2:学会会長Knüchel-Clarke教授と都築評議員

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写真3:学会ロゴをあしらったお菓子とKnüchel-Clarke教授からの手紙

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写真4:学会内ポスター会場

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写真5:会長招宴会場の壁面に掲げてあるVirchowの講義風景

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写真6:発表風景(都築評議員)

文責
都築豊徳 (愛知医科大学 病院病理部)
笹野公伸 (東北大学 病理診断学分野)