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第98回ドイツ病理学会への本学会員招聘派遣報告

日本病理学会の日独交流事業の一環としてこの度、深山正久理事長、中沼安二功労会員、小田義直常任理事、柴田龍弘学術評議員の4名が第98回ドイツ病理学会に招聘された。学会は2014年6月12日から15日の期間、Berlin、Alexander Platzに隣接したBerlin Congress Center において開催された(写真1)。今回の学会会長であるMagdeburg大学Prof. Albert Roessner の企画によりプログラム編成がなされ、それを学会(ドイツ病理学会会長はHeidelberg大学Prof. Peter Schirmacher)が承認する、という日本の病理学会学術集会と同じ形式がとられている。開催地は学会会長の所属大学に関係なくここ数年Berlinに固定されているようであるが、来年はFrankfurtで開催予定とのことである。 今回のプログラムの重点テーマはProf. Roessnerが指定した"Inflammation and Carcinogenesis"と"Orthopedic Pathology Including Bone and Soft Tissue Tumors"の2点となっており、日独合同シンポジウムではこのテーマに沿った内容で日独双方のシンポジストにより発表が行われた。またドイツ病理学会一般会員のドイツ語でのプログラムでも同一テーマのシンポジウムが開催された。

日独合同シンポジウム(Joint Japanese German Symposium)の発表者と演題名は以下の通りである(プログラムより抜粋)。

6月13日

08.10-08.40
Peter Schirmacher(ドイツ病理学会理事長), Heidelberg, Germany: Inflammatory liver tumorigenesis

08.40-09.10
Masahashi Fukayama(深山理事長:写真2), Tokyo, Japan: Epstein-Barr-virus and gastric cancer

11.00-11.30
Yoshinao Oda(小田常任理事), Fukuoka, Japan: Activation of Akt-mTOR pathway and its therapeutic implication in spindle cell soft tissue sarcomas

11.30-12.00
Thomas Kirchner, Munich, Germany: Carcinogenesis and molecular subtyping of colorectal cancer

14.30-15.00
Yasuni Nakanuma(中沼功労会員), Kanazawa, Japan: Inflammation and cancer of the biliary tract

15.00-15.30
Christoph Röcken, Kiel, Germany: Stem cells in chronic gastritis and gastric cancer

15.30-16.00
Tatsuhiro Shibata(柴田学術評議員), Tokyo, Japan: Hepatocellular carcinoma and HBV/HCV infection

16.00-16.30
Frank Dombrowski, Greifswald, Germany: Diabetes mellitus and carcinogenesis

また、ドイツ病理学会とドイツIAP支部との合同の臓器病理診断講習会が同時に開催されており、以下のように小田常任理事が軟部腫瘍の病理診断コースを担当した。

6月14日

Diagnostic Courses in Cooperation with the German Division of the International Academy of Pathology

10.00-12.00 Yoshinao Oda, Fukuoka, Japan: Soft tissue tumors including entities currently under discussion

会場は日本の病理学会に比較してこじんまりとしており、参加者も比較的少ないと感じられた。Prof. Roessner(写真3)にドイツ病理学会の実情を尋ねたところ、ドイツ病理学会会員は約1000名、一方ドイツIAP支部の会員はその2倍近くいるとのことであった。ドイツでは病理で開業したり検査会社で診断したほうが大学で研究するより収入がはるかによいので、若手は研究に重きをおいた病理学会ではなく病理診断に重点を置いているIAPに数多く入会しているとのことであった。以前は兼業願いを出していれば大学教員も兼業で検査会社などの標本を診断することが可能であったが、数年前に大学教員の兼業が禁止され、大学教員は収入がかなり減ったというのもこの傾向に拍車をかけたそうである。

Keynote lectureは7演題であったが、6演題はドイツ以外の国の講演者であった。また、一般演題は、口演、ポスター口頭発表はほとんどドイツ語であったが、ポスターは英語を用いているものがほとんどで、さすがに国際的であった。オーストリアはもとより、スイス、ハンガリーなどでドイツ語を使用している病理医も、母国固有の病理学会に加えてドイツ病理学会に入会しており、学会内で活躍していた。日本病理学会もこれにならって学術集会の国際化を進め、アジア諸国との交流をより盛んにして行く必要があると思われた。

文責
深山正久 (東京大学人体病理学)
中沼安二 (静岡県立がんセンター病理診断科)
小田義直 (九州大学形態機能病理学)
柴田龍弘 (国立がん研究センター がんゲノミクス研究分野 分野長)

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写真1: 会場となったBerlin Congress Center

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写真2:講演する深山理事長

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写真3:晩餐会でのRoessner会長、小田常任理事、深山理事長