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日本病理学会監事 故佐野壽昭教授を偲ぶ |
(社) 日本病理学会前理事長 長村義之
佐野壽昭教授は、日本病理学会において、長い間種々委員会の委員、支部長、理事など多くの役目を務められ、日本病理学会監事としてご尽力いただいているさ中に急逝されました。病理学を愛し、人を愛し、また病理学会を愛した佐野教授のご逝去は、病理学の発展にも大きな損失であり、亡くなられて既に4カ月近くたちますが、思い出すことも多く悲しい限りです。
佐野教授とは、いつ頃から親しくなったのか記憶にない程長いお付き合いをさせていただきました。お互い病理学の中でも内分泌病理学に興味を持ち、長い間切磋琢磨しつつも良き友人として一緒に歩んでまいりました。特に佐野教授がTorontoのDr.Kalman Kovacsのもとで下垂体腫瘍の勉強をされ、帰国されてからは、下垂体という"小さくても偉大な臓器"に共通の興味を抱き、新しい知見を自慢しあうのが無上の楽しみでありました。病理学の中では、内分泌病理学を志す者は、数の上では多いとは言えませんが、発信する情報は先端的であり、学会での討議も"熱くなる"こともしばしばです。佐野教授は、学問への情熱も人一倍であり、学会などでは厳しい質問を受けた人も多く、私もその一人でありました。しかし、彼を恨むものは誰もおらず、常に敬愛されていました。佐野教授は、常に悠然と構えていて、笑顔を絶やさず、接するものすべてを魅了する魅力がありました。愛すべき友を失った大きな悲しみを皆様と共有いたしたいと思います。
2009年秋、佐野教授は国際下垂体病理研究会を学会長として淡路島にて開催される直前に、歯肉の腫瘍が発見され、意を決して手術されました。学会当日は、術後数日にも関わらず学会長としての激務を立派にこなされ、学会は国内外から大勢の下垂体病理のオーソリテイの出席者があり、大盛会でありました。翌年、かねてからの計画通り、ご自身の活躍の場を徳島から東京へ移され、東京に新居を構えて江戸川病院で病理診断をされ、虎の門病院で下垂体研究に没頭すべく活動を開始されました。がその矢先に、腫瘍の再発という事態に見舞われ再手術を受けることになりました。手術の結果、発声がかなわなくなりご不自由でしたが、気丈に病理学の研究面での執筆に力を入れられ、その力強さに胸打たれました。しかし、病魔は急速に忍び寄り、2011年2月10日家族に囲まれて安らかに永眠されました。亡くなる前に時々入院先にお見舞いに行き、筆談でいろいろとお話し致しました。志半ばで病に倒れた無念さを、またご家族への深い思いを推し量るだけでも心痛みましたが、佐野教授は、最後まで笑顔を絶やさず明るく振る舞っておられました。
今年の秋は、国内外の学会で、"佐野壽昭記念シンポジウム"が企画されております。佐野教授の偉大な業績を忘れないという熱い思いが各地で展開されると思います。
佐野壽昭教授 長い間日本病理学会にご尽力くださり、本当にご苦労様でした。また有難うございました。心より哀悼の意を表します。