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> 遠城寺宗知先生のご逝去を悼む
日本病理学会名誉会員、九州大学名誉教授、遠城寺宗知先生は平成22年6月21日、脳腫瘍のためご逝去されました。享年83才でした。ここに御生前の御功徳を偲び、謹んで哀悼の意を表します。
遠城寺宗知先生は大正15年11月24日福岡市にてお生まれになりました。昭和26年に九州大学医学部を卒業になり、九州大学第一病理故今井環教授の門を叩かれ病理学研究の道に入られました。昭和31年学位取得と共に講師、昭和33年助教授に昇任されました。昭和38年鹿児島大学に新設された第二病理学教室の教授に就任され、昭和45年に九州大学医学部教授に任ぜられ、第4代第二病理学講座教授に就任されました。平成2年4月に停年退官後、九州大学名誉教授の称号を授与されました。教授として20年間の長きに渡って教育、研究に専念すると共に門下生および大学院生の研究の指導にも心血を注がれてこられました。
先生は日本で外科病理学の研究を始められたパイオニアのお一人で、現在では先生の薫陶を受けられた全国の病理学者によって外科病理あるいは診断病理の研究がいっせいに花開き、大学の病理学教室のなかでも診断病理学という名称を標榜している講座が出始めているのを見るに付け先生の先見の銘と、外科病理学の発展のために御尽力されたお姿に感銘を受けます。外科病理の中でも特に軟部腫瘍の研究に精力的に取り組まれ、その集大成は1982年の第71回日本病理学会総会での宿題報告「軟部肉腫および肉腫様病変の組織形態学」として発表され、日本での軟部腫瘍研究の第一人者としての地位を確立されました。軟部腫瘍のみにとどまらず、各種臓器の外科病理に精通し石川栄世先生、牛島宥先生と編集、執筆にあたられた"外科病理学"の教科書は版を重ねて、全国の病理医の必携の書となっています。また先生の病理診断への情熱は並々ならぬものであり、在任中は大学病院をはじめとした病理診断の殆どを先生自らサインアウトされました。
学会活動としては数期にわたり日本病理学会理事を務められ、平成2年に第79回日本病理学会総会を主催されています。また国際病理アカデミー日本支部の理事も務められ平成4年には日本支部会長に就任されました。
停年退官後は福岡県対がん協会会長を務めながら、自ら病理診断も市中病院で続けられました。また少年時代からの趣味である鉄道研究の一環として全国の駅巡りにも精力的に取り組まれ、全国の駅の80%以上を訪れたと聞き及んでいます。各駅の特徴を詳細に観察され、その記録は外科病理の研究に通じるところもあり、この成果は4冊の本となり出版されました。
先生は病理学の教育、研究、病理診断を通して九州大学医学部の発展に寄与し、日本病理学会の重鎮として卓越した多数の業績を挙げ、わが国ならびに世界の外科病理学の研究進展に多大の貢献をされました。ここに謹んでご遺徳を讃え、御冥福をお祈りいたします。
九州大学 大学院医学研究院
形態機能病理学(旧第二病理学)教授 小田義直
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