このページでは、Javascriptを使用しています
  • 日本病理学会について
  • 市民の皆さまへ
  • 専門医
  • 病理医への扉
  • 刊行物

HOME > 新着情報 > 論壇『日本における病理学教育はいかにあるべきか』


論壇『日本における病理学教育はいかにあるべきか』

和歌山県立医科大学 病理学 覚道健一
川崎医科大学 病理学 森谷卓也
東京女子医科大学 病理学 小林槇雄
岩手医科大学 病理学 澤井高志
大阪市立大学 診断病理学(附属病院病理部)若狹研一
東京逓信病院 病理科 田村浩一
広島大学 病理学 井内康輝

第98回日本病理学会総会ワークショップ『日本における病理学教育はいかにあるべきか』にて提言をまとめました。『論壇』とし投稿し会員の皆様のご意見を伺いたいと存じます。


卒前教育にかかわる点

  1. 優れた病理学教育の実現には、良い教育カリキュラムと、資質に富む学習者、教育能力を備えた教員のすべてが必要です。
  2. モデルコアカリキュラムが提示され、共用試験(CBT)の導入により医学部教育に一定の知識水準が設定され、自由奔放な発想での教育は制限される こととなりました。病理学教育についても個性ある病理学教育とともに、一定のガイドラインに従った病理学教育についてコンセンサスを形成する必要がありま す。
  3. 多くの医学部、医科大学で、基礎医学としての病理学講義から、臓器ごとの統合型カリキュラムへ変更されています。しかしその講義項目、時間数と内容は大学ごとに異なっています。病理学会として、現在行われているカリキュラムを評価し、病理学教育モデルカリキュラムの提示が必要です。
  4. 病理学教育の方略として、旧来の講義、組織実習、基礎配属、CPCなどにとどまらず、情報化機器を病理学教育に積極的に取り入れる必要があります。病理組織実習については、従来の顕微鏡実習を残しながら、バーチャルスライドの併用が望ましいと考えます。
  5. CPC研修に関しては、多くの大学での取組に違いがあります。初期臨床研修に必須項目となった今、全国的に統一(essential minimum、minimal requirement)されたCPC教育のカリキュラムが必要と考えます。
  6. 基礎配属実習による病理学研究への参加は、次世代獲得に有用と考えられます。また付属病院病理診断部門での臨床実習は、学部学生に医療の中での病理学の役割を体験させる上で重要です。これを推進するためにも、病理学会としての立場を明確にし、周辺基盤の整備をする必要があります。


卒後研修にかかわる点

  1. 新臨床研修で必修項目とされたCPC研修は、研修医が病理学を学ぶことにとどまらず、医師となるすべての人々に、病理解剖が医療監査の役割を果たすことを伝えることが目的です。病理以外の進路選択者にも、病理部での短期研修が可能となりました。ここでは、臨床医となる多くの人々に、病理診断学の持つ意味を伝えることができます。これらを意図的に推進することが病理学の将来と人材の獲得に重要と考えます。
  2. 病理専門医制度では研修目標は定められていますが、施設間の研修内容に差があり、将来的には、数的基準だけでなく、研修内容と質についても、公的機関や他者による各研修施設の検証が必要となると考えられます。
  3. 技術領域のSBOは、一認定施設ですべてを網羅するのは困難と考えられます。病理学会の役割として、この不足部分をカバーできる体制作りが必要です。すなわち他の認定施設で補完できる実習カリキュラムの整備と提供を病理学会として提示することです。
  4. 病理専門医資格取得後も継続的な研修が必要です。卒後研修カリキュラムの作成、運営とその継続的提供は、病理専門医と研修施設を認定する病理学会の責務と考えられます。
  5. 具体的にはUSCAPなどでみられる各臓器別講習会を提供することが必要と考えます。病理専門医の卒後教育と対外的に病理専門医の質を保証するための方略として、病理学会が主体的に関与することが重要と考えます。
  6. 病理専門医研修にとって、リスクマネージメント、廃棄物処理等は重要な研修項目です。病理研修に必要な知識領域のSBOにおいては、病理学会としての標準的なテキストの作成、講習会の開催等が必要です。