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国立大学附属病院の医療提供機能強化をめざしたマネジメント改革について


 明後年に予定されている国立大学の独立行政法人化にむけて、国立大学医学部付属病院長会議は、表記の提言を本年3月に公表いたしました。全体の論調は収益をあげることに主眼がおかれた提言となっており、本学会としても受け入れかねる内容が書かれています。
国立大学附属病院での動きは他の国立病院や私学・民間の病院へまで重大な影響を及ぼすものと考えられます。
この様な状況の中で、本学会としては理事長名にて提言の中にある問題点を指摘し、"見解"として提出いたしました。以下にその全文を掲載します。
学会員の皆様は、各々の勤務先で近い将来、提示される改変案が、上記の提言に沿ったものであると判断された際には、この"見解"に本学会の意向がこめられていることをふまえて対応をお願いいたします。
なお、本件に関するご意見がありましたら、学会事務局までお寄せ下さい。

平成14年5月8日
(社)日本病理学会
常任理事会 

国立大学医学部附属病院長会議
常置委員会委員長
千葉大学医学部附属病院長
伊藤 晴夫 先生
平成14年3月20日
社団法人日本病理学会
理事長 秦 順一
"国立大学附属病院の医療提供機能強化を目指したマネジメント改革について(提言)"
に対する(社)日本病理学会の見解
国立大学医学部附属病院長会議常置委員会より提言された改革案には見るべき点もあるが、医療の質や医学教育・研究に対する視点が欠如しており、中央診療部門に関しては大きな問題点をはらんでいる。
専門・細分化した診療体系のなかでは中央診療部門がきわめて重要な役割を果たしている。特に、高度先進医療を推進する国立大学医学部附属病院ではなおさら 重要度が高い。市中の病院と比較して中央診療部門専任の医師を確保することも容易であり、独立行政法人化してもその状況に変化はない。然るに、提言におい て中央診療部門に示された改革案は1)部長・副部長の人事、2)臨床検査技師などの診療支援部への所属、3)検査の委託、である。
診療科においては各講座教授が必ずしも診療科の責任者ではなく、診療に専任する者を診療科長とする案が示されているが、病理部に関しては病理部長等の医師 の構成員は基礎医学の病理学講座教員の併任とすることが提案されている。病理診断が医行為である以上、むしろ診療科と同様に病院病理部に専従する病理医を 責任者とし、病理診断の質を向上・維持し、病理医を育成する必要がある。診療支援部として臨床検査技師、放射線技師、薬剤師を統括する部門を設置し、人員 配置を流動的、有効に行うことを目指すとあるが、専門性が高く、異なる職種を一括して管理することには無理があり、効率的ではない。同じ臨床検査技師とし ても病理部技師は特に専門技術の必要性が高い。病理・細胞診標本作成の外部委託は病理学的確定診断や臨床診断の検証を円滑、かつ十分に実施することを不可 能にすることになる。検査センターにおける病理診断の多くは非常勤医によりなされ、その責任のあり方が問われており、むしろ人員を有している国立大学医学 部附属病院病理部が独立行政法人化に際し専任病理医の常駐しない近隣の病院の病理診断を受託する方向に進むことも考える必要がある。