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診療報酬改定「第2章第13部 病理診断」の実現を受けて


診療標榜科名「病理診断科」と
診療報酬改定「第2章第13部 病理診断」の実現を受けて

日本病理学会理事長 長村義之
診療標榜科「病理診断科」について

平成20年4月1日より「医療法施行令の一部を改正する政令」および厚生労働省令により、"病理診断科"が医業に関して広告できる診療科名(診療標榜科 名)となりました。日本病理学会の永年の念願であり、その実現に向けてこれまでご尽力されてこられました多くの先輩の方々に改めて深く感謝申し上げます。

この法律が制定されることにより、我々には何が求められ、また我々はどのように変わって行く必要があるのでしょうか。
まず、医療機関である病院において 病理診断科が他の診療科名と一緒に院外に広告されることになります。このことにより患者さんは、病理専門医が病理診断 をしている診療精度の高い病院であることを知ることになり、また、院内でも診療科としての病理診断科が明記されますので、病院を受診されている患者さんに その存在が周知されます。病理診断に対する国民の理解が深まることは我々の望むところでもあります。
このような状況で、病理医としての業務の対応は当面現状通りで大きな支障はないと思われます。しかしながら、診療科としての標榜は、何らかの形で病理医が 外来で患者さんと接する機会を設ける際に、大きなよりどころとなります。その様な施設においては、病理診断科に来てファーストオピニオンとしてのご自分の 病理診断について説明を希望される患者さんも出てくることでしょう。その際には、病理医にも診療科としての対応が求められると思います。すなわち患者さん と主治医に充分なコミュニケーションをとり、配慮をしつつ病理医が説明をする場面も充分に想定されますし、もう既に"病理外来"として開始しておられる施 設もあると伺っております。この件は、各医療機関で無理のない形で患者さんからのニードに対応してゆく必要があろうかと思います。また、患者さんがスライ ドなどを持参してセカンドオピニオンを希望されることも多くなってゆくと思いますが、ファーストオピニオンとセカンドオピニオンは異なるものであることを 充分に認識し、同一標本の診断を巡って混乱が起こらぬよう、病理学会としてこれを機に病理医の診断の精度管理およびコンサルテーションパネルの整備に更に 力を入れてゆきたいと考えています。


診療報酬改定について

今回の診療報酬改定では、日本病理学会としては病理診断を第3部「検体検査」から独立させることに集中して厚生労働省に要望しました。内保連、中医協、医 師会ともお話し、最終的には舛添要一厚生労働大臣にも私たちの要望を聞いていただきました。その結果、4月1日から病理診断は、第13部の新たな部として 創設されました。これまで、病理診断という医行為が検体検査の3部に入っていることで、診断料として前回の改定で保険収載されたものの検査の一部として扱 われており、"病理診断"は病理専門医による仕事であることが患者さんにも、コメデイカルの方、学生諸君などにも周知されませんでした。今回の改定「第 13部の創設」は、病理診断が果たしている診療行為の社会的な責任を患者さんにも理解していただくという視点からも、後進の若手病理医をリクルートすると 言う点からも、極めて意味の大きいことと考えています。内容に関しても、病理標本作製料(880点)と病理診断料(410点)に分けて、ホスピタルフィー とドクターズフィーの考え方が具体的に導入されることになりました。この改定の実現に多くの時間を費やしていただいた厚生労働省医療課の方々に深く感謝申 し上げます。個々の保険点数は、ほとんどの項目がそのまま据え置かれましたが、これも、全体としての医療費削減を考えた場合、我々にとって評価すべき結果 と考えるべきでしょう。先ず、診療報酬体系の中に病理診断をしっかり位置づけることが大切と考えます。患者さんが病院から受け取る領収書には"病理診断" の項目が新設されています。患者さんは、医療費の3割を負担されるので、我々は病理診断の社会的責任を充分に感じて診断業務に当たる必要があります。学会 としても精度管理に更に力を入れてゆく必要があり、精度管理小委員会で会員のためのマニュアル作成を進めています。
病理診断に関わるわが国での大きな課題は、現在登録衛生検査所で行われている病理診断の取り扱いおよび病理医が医業としての病理診断を開業する場合です。 ご存知のように病理診断は医行為であるので(平成元年 医事課長通達)病理診断は医療機関で行うよう厚生労働省からは義務付けられています。その上で、医 療機関において病理専門医が病理診断をする場合、病理診断料を請求することが出来ます。衛生検査所も標本作製部分と病理診断部分を分けて考え、病理診断の 部分では、病理診断医は保険医登録し医療施設としての施設登録する必要と思われます。この後者が病理診断の開業につながるものと考えます。この点に関して は、解決すべき多くの課題が内在するものと思われます。日本衛生検査所協会(日衛協)、日本医師会などとも十分に審議し、病理学会としてもシステム作りに 既に取り掛かっています。次の診療報酬改定では、標本作製の内容、病理診断行為にかかる時間などを考慮に入れた、具体的保険点数の向上を図りたいと考えて います。

このように、考えてきますと、我々病理医を取り巻く環境は「診療標榜科としての病理診断科」「診療報酬における第13部の創設」により大きく前進したもの と思います。これをベースに病理医の診断業務が浮き彫りにされ、開業を含めた診療業務形態も多様化し、診療報酬も向上する下地が出来たものと思っていま す。細かい問題点はこれから、会員の方々および市民の方々のご意見を伺いながら、学会として充分な審議を尽くして、"良い方向へ変革"を遂げてゆきたいと 思います。この方向は若手病理医の育成にもつながるものと信じています。
皆様のご理解とご支援を宜しく御願いいたします。
最後になりますが、病理学会「病理診断体制専門委員会」「社会保険小委員会」の先生方の献身的なご尽力に深く感謝申し上げます。