HOME > 新着情報 > 厚生労働省「病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)への意見募集」について(報告)
厚生労働省「病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)への意見募集」について(報告) |
病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)に対する
(社)日本病理学会としての意見
日本病理学会として本件に関しての意見を述べさせていただきます。
今回のご提案は貴省が、病理の医療における専門性と重要性を強く認識され、その上にたって病理機能の充実を諮られた施策であると認識いたしております。
とくに最近は地域の癌拠点病院における病理充実の必要性や、地域の医療関連死問題等、全国の幅広い領域において病理の役割について理解をいただいてきてお
り、それらの面での必要性の理解の上で、地域における病理機能の充実をはかられているものと認識いたしております。ご理解とご高配に感謝をいたします。
日本病理学会では医療における病理の専門性を重要な課題として認識し、昭和53年よりレベルの高い認定試験を実施し、昨年までに2507名の病理専門医
を医療社会に送り出してまいりました。物故会員,診断業務から引退された会員と病理専門医をめざしている若手病理医を相殺すると、日本の診断病理医は約
2500名でプラトーとなり、最近では減少する傾向が危惧されております。医療に関する国際的な観点からは、わが国の大きな特徴として病理医の数が少ない
ことと、病理医の大部分が大学に集中していることが挙げられます。我が国の病理医の人口比は欧米の水準の1/3のレベルであります。これには欧米と異なり
病理医が標榜科として認定されておらず、医業として独立して開業する仕組みがないこと、これによって病理を専攻するためのインセンティブを削がれている事
が影響していると考えます。病理医の不足という問題は、我が国の医療の質的保証という観点から、近い将来に改善しなければならない重要な点であります。
わが国の医療現場における病理診断については、その実数を正確に把握することは不可能ですが、約半数が大学や基幹病院でなされ、残り半数が衛生検査所を
介して病理医へ委託され診断されております。また、大学以外では、常勤病理医が勤務し日本病理学会が認定している基幹病院(認定病院)でも、病理医数は平
均すると2名を切っております。すなわち大部分の基幹病院ではひとり病理医か、不在で大学からパートで派遣されている状況です。ひとり病理医は多忙で、休
暇をとったり、学会へ出席することもままならず、閉塞された苦しい生活を送っております。特に、大都市を離れた地方では、病理医数が極端に少ない状況があ
り、日本病理学会としても、ネットワークをつくってお互いに助け合うシステムを自らつくろうと努力していますが、現実に地域の基幹病院に勤務する病理医の
多くはは自分の持ち場の責務を果たす事に精一杯という状況下にあり、現実にそのようなシステムを構築することは厳しいものがございます。
病理医は患者さんを直接診ていないという指摘があるのですが、病理検査は他の検査と全く異なり、最終診断をしているわけですので、病理医は
検体を通じて診察をしていると言えると思います。また最近では、病理医が患者に対し疾患について病理所見などを述べる「病理外来」が開設されてきており、
医療における病理専門医の新たな位置づけがなされてきております。病院にて、常勤の病理専門医の広告が可能になったことは、病院の機能を表示するものとし
て、我々も高く評価するものであります。患者さんにとっても、自分の病気の最終診断をする病理医が誰であるかということを知る権利がありますし、衛生検査
所へ病理検体を委託している臨床医にとっても、病理医の顔が見えないのはよくありません。これは病診連携そのものと考えております。
以上のごとく日本の病理医の現状を背景に、今回の受託要件の緩和(案)を考えますと、小規模医療機関での病理診断を近隣の医療機関に依頼す
ることにより充実させ、依頼される側には収入増となる点は利点と考えられ、可能な部分における拠点形成・充実への支援の施策、という意味で積極的な意義が
認められ、基本的にはこの考えを支持し発展させたいと考えます。しかし一方では、これを全国で行うとすると、現実的ないくつかの問題点が浮かび上がってま
いります。
すなわち、一定の病床数および全身麻酔での手術数に応じて常勤病理医を配置することが必要なわが国の現状に反し、この「受託緩和」により、
ひとり病理医を中心とした病院での病理医にこれまで以上の負担がかかる場合がありうるのではないか、という危惧です。これには本来の業務に支障を生じない
範囲内でとの縛りが存続するものの、各病院での病理医の環境は様々で、一人病理医を更に苦境に立たせることのなきよう、あくまでも自由意志にもとずくこと
である点の、重ねての説明が必要と思います。また、今回の病院が満たすべき基準を拝見すると、これを積極的に行おうという意思を持つ病理部にとっては現実
的に規制緩和ではなく、規制強化となるという意見もありますので、この点にもご留意願えれば幸甚に存じます。
わが国の医療の質の向上のため、病理専門医が近い将来に病理診断を独立した標榜科として日本の医療に貢献することを目指す際に、今回の受託要件の緩和(案)がマイナスの要因とならぬよう格別なご高配をお願いいたす次第であります。
(社)日本病理学会では、わが国の病理の現状を鑑み、将来へ向けて医療の質の検証と医療の安全のために全力で対応する所存であります。貴省
におかれましては、そのための病理医が育成されるためのより堅固な土壌の形成に、引き続きご尽力いただき、また病理のマンパワー不足の解消にご支援を更に
いただけますよう、お願い申し上げる次第であります。
平成17年2月14日
会員各位
厚生労働省「病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)への意見募集」について
(社)日本病理学会 理事長 森 茂郎
日頃は日本病理学会の学会活動にご協力いただき、ありがとうございます。
この度、厚生労働省ホームページにおいて、下記の通り、病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)への意見募集(厚生労働省医政局総務課 2月4
日付)がされております。これに対し病理学会からのパブリックコメントを作成中であります。個人的なご意見を提出されても結構でございますが、できるだけ
多くのご意見を採り入れ、できましたら病理学会としてまとめて提出いたしたく、ご意見を2月16日(水)までに事務局あてお寄せ下さいますよう、ご案内申
し上げます。
パブリックコメント提出の締め切りが迫っております関係上、急なご案内になりましたことをご容赦下さい。
ご意見宛先 病理学会事務局
E-mail jsp@ma.kcom.ne.jp
TEL 03-5684-6886 FAX 03-5684-6936
〒113-0033 東京都文京区本郷2-40-9 ニュー赤門ビル4F
締め切り 平成17年2月16日 (水)
病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)への意見募集
平成17年2月4日
厚生労働省医政局総務課
病院が検体検査業務を受託することについては、現在①営利を目的としていないこと、②業として(反復継続して)行ってないこと、③病院本来の
検体検査業務に支障を生じないこと、の全ての要件を満たした場合にみとめているところですが、先般の「構造改革特区の第4次提案に対する政府の対応方
針」(平成16年2月20日構造改革特別区域推進本部)において、提案主体からの要望を受けて、今後全国規模で病院における専門性の高い検体検査業務に限
り、その受託に際して、「業として行っていないこと」を要件としないこととする要件緩和を行う予定ですので、下記によりご意見を募集します。
皆様から頂いたご意見については、最終的な決定における参考とさせていただきます。
なお、提出していただいたご意見に対する個別の回答はいたしかねますので、その旨ご了承願います。
記
1 意見募集期限
平成17年2月18日(金)必着
2 提出方法
ご意見は理由を付して、以下に掲げるいずれかの方法で提出してください。
なお、提出していただくご意見には必ず「病院における検体検査業務の受託について」と明記して提出してください。
○ 電子メールの場合
電子メールアドレス:ISEISOMU@mhlw.go.jp
厚生労働省医政局総務課企画法令係あて
(ファイル形式はテキスト形式でお願いします。)
○ ファクシミリの場合
ファクシミリ番号:03-3501-2048
厚生労働省医政局総務課企画法令係あて
○ 郵送の場合
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省医政局総務課企画法令係あて
3 ご意見の提出上の注意
ご意見は日本語に限ります。また、個人の場合は住所・氏名・年齢・職業を、法人の方は法人名・所在地を記載してください。これらは、公表させていただくことがありますので、あらかじめご了承願います。
病院が専門性の高い検体検査業務を受託する際の要件(案)
今回の措置で、病院が専門性の高い検体検査業務を受託する場合に限って、「業として行っていないこと」を要件とせず、「営利を目的としないこ
と」及び「病院本来の検体検査業務に支障を生じないこと」のみを要件とすることとするが、受託する病院が当該業務の実施に当たり遵守すべき要件は以下のと
おりである。
なお、下記(1)に示す専門性の高い検体検査業務以外の取り扱いは従前の例による。
(1)病院が受託できる専門性の高い検体検査業務の範囲
① 病理学的検査 (②に該当するものを除く。)
② 検体中の核酸又は遺伝子を対象としたいわゆる遺伝子検査