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地域病理ネットワーク検討委員会の報告


来年4月、"新医師臨床研修制度"の発足にもとづいて、CPCレポートの提出が研修の必修項目となり、その指導を行う大学あるいは病院で の病理医の負担が増すことが予想されます。この事態への対応策を探るため、日本病理学会としては理事長直属の委員会として"地域病理ネットワーク検討委員 会"を立ち上げ、検討を開始したところであります。

この状況の下、去る6月16日(月)の朝日新聞の朝刊に"病理医の地域偏在を是正するために、病理医不在施設に他施設から病理医を配置することを日本病理 学会が行う"という趣旨の記事が掲載され驚かれたかと存じます。これは取材記者の誤解による記事であり、記事の表現の訂正を申し入れたにも拘らず、聞き入 れられなかったという事情がございます。

そこで、諸先生方に"地域病理ネットワーク検討委員会"の現在の検討状況及び
厚生労働省とのやりとりをここにご報告致します。

1. 地域病理ネットワーク検討委員会での検討内容

1) 臨床研修病院(群)単位での、研修医指導の可能な病理医(病理専門医が望ましい)の配置状況の調査を行う。
2) 大学とは直接関連しないで機能している既存のネットワークの調査を行う。
3)

厚生労働省に対して、医師派遣の規制緩和、研修医のための剖検やCPCの実施に関する経費などについて、問い合わせと意見具申を行う。



2. 厚生労働省との交渉内容あるいは情報

1)

CPCとは、病理解剖例を用いた検討会である。手術材料を用いた場合は認めない。

2)

剖検の経費については調査中。日本病理学会としては、平成4年5月に病理解剖体経費として、文部省(当時)に剖検1体当り、116,801円とするよう要望書を出していることを伝えている。但し、これには人件費が含まれていないことも伝えている。

3)

厚生労働省の"医療分野の規制改革検討会"から、平成16年春より、医師などの医療従事者の病院への派遣業務が人材派遣業者などに解禁される方針が示されている。地域病理ネットワークにとって課題のひとつである他院の剖検等の援助が可能となる可能性がある。

この地域病理ネットワーク構想は、病理専門医が不足している地域において病理専門医の相互協力を可能とし、もって当面の新医師臨床研修制 度への対応問題のみでなく、病理医の労働条件の改善(休日の保証など)、術中迅速診断への対応(画像伝送などの応用)、診断の精度管理などの様々の面で病 理業務の円滑な運営に資することををめざすものです。現に沖縄県での病理センター化構想(病理専門医部会会報、平成14年10月)の他に、岩手県でも動き があると聞いています。地域での病理専門医の慢性的な不足と新しい人材の供給もままならない現状の下で、負担増のみが重くのしかかる病理の現状を打破する ために、新しい形の共同体を提案してみたいと思っております。

上記の件につきまして、学会会員の皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げます。