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(社)日本病理学会教育委員会主催、第9回教育ワークショップ報告 |
(2007年9月23日(日)、藤田保健衛生大学生涯教育研修センターにて開催、参加者20名)
教育委員会委員長 堤 寛
(社)日本病理学会教育委員会では、上記日程、場所において第9回教育ワークショップを開催し、"これからの病理学教育"に関して、卒前教育を中心に議論した。その成果として、以下の報告書をまとめた。
これからの病理学の卒前教育として現時点で必須な事項として、以下の2項目が指摘された。さらに、これを踏まえた新しい教育モデルをまとめた。
1. 基本事項
(1) 標榜科時代の病理学(病理診断学)教育
2007年9月21日、厚生労働省医道審議会において、来年度より病理診断科が標榜科として承認された。今後政令・省令として整備されてゆく予定である。
これに伴い、医療における病理診断の意義について理解することを基本として、病理診断が患者に与える影響・重要性を学生に正しく伝える必要性が再認識され
る。したがって、手術組織、術中迅速、生検、細胞診を対象とする正確な病理診断がその後の医療(治療)の基本となる点に関して、症例検討を通じて学生に理
解してもらう側面がより強化されねばならない。
(2) モデル・コア・カリキュラムの弱点を補う教育
モデル・コア・カリキュラムの実施によって臓器別、疾患別の視点が強化された結果、疾患の全身に及ぼす影響の理解や系統的に病態を理解する能力の育成が不
十分となっている傾向がある。これを補う意味で、病理解剖例を利用して臨床病理カンファレンス(CPC)を行うことは、全身的な病態生理を横断的に理解す
る統合型学習として最適である。加えて、病理学のもつmedical audit(医療監視)としての役割の理解にも役立つ。
2. 病理学教育モデル
病理学は全学年を通じて学生に接する数少ない科目といえるため、以下のような経年的な教育モデルを構築できる。
1年次:
Early Exposure(選択)
・ 病理診断学の実務を見学する
・ 病理医の存在を知り、その役割(診断、解剖、研究)を理解する
2~3年次:
基礎医学・病態学(必修)
i) 病理学総論(病因論、病態の把握):
・ 病因論を理解する。
・ テュートリアル形式の学習で、病因と病態の関連を学ぶ
ii) 病理学各論(疾患の基礎):
・ 肉眼所見と画像診断の関連、病理診断学の重要性を学ぶ
・ 手術・生検症例を用いたテュートリアル学習で、代表疾患の病態を学ぶ
4年次:
統合型臨床講義(必修)
・ 臨床医学における病理学的な病態解析を学ぶ
・ 手術組織、術中迅速、生検、細胞診を対象とする病理診断学の有用性を理解する
症例検討(CPC形式:必修)
・ 病理解剖例を通じて、全身の病態解析を学び、病理解剖の意義を理解する
2~4年次:
教室配属(研究室研修:選択)
・病理学的研究、症例研究の面白さに触れる
5年次:
臨床実習(必修)
・病理診断の実際を体験する
実習内容:検体受付、検体の取り扱い、外科材料の切出し、代表的な染色法とその意義、標本作製、病理診断報告書の作成と意義、術中迅速診断の意義と限界、
臨床医とのコミュニケーション、臨床とのカンファレンス、病理解剖の意義と役割、病理診断における医療安全・バイオハザード対策など
重点目標:肉眼所見の重要性を知る(画像診断との連携が必要)
6年次:
1. 特別臨床実習(選択)
・ 標榜科としての病理診断科の実務をより深く理解する
2. まとめ講義(必修)
・ 病態を全身的・統合的に理解する
・ 疾患の病理学的な考え方を総復習する
・ 病理画像の読み方を整理する
ワークショップ参加者
稲留征典(筑波大学大学院人間総合科学研究科診断病理)
茅野秀一(埼玉医科大学病理学)
近藤福雄(帝京大学医学部病理学)
宇於崎宏(東京大学医学部附属病院病理部)
澤田達男(東京女子医科大学第1病理学)
稲田健一(藤田保健衛生大学医学部第1病理学)
小谷泰一(京都大学医学部附属病院病理診断部)
筑後孝章(近畿大学医学部病理学)
荻野哲也(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病態探求医学)
梅村しのぶ(東海大学医学部病態診断系病理診断学)
*堤 寬(藤田保健衛生大学医学部第1病理学)
*井内康輝(広島大学大学院病態情報医科学)
*羽場礼次(香川大学医学部附属病院病理部)
*田村浩一(東京逓信病院病理科)
*鬼島宏(弘前大学医学部第2病理学)
*伊藤浩史(福井大学医学部腫瘍病理学)
*下正宗(東葛病院病理部)
$松井俊和(藤田保健衛生大学医学部臨床医学総論、教育企画室長)
#黒田誠(藤田保健衛生大学病理部Ⅰ)
#長村義之(東海大学医学部病態診断系病理診断学)
(*:教育委員、$:基調講演者、#日本病理学会常任理事)