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病理医の職能に関する小委員会報告(2004年度) |
病理医の職能に関する小委員会報告(2004年度)
2005年4月
委員長 堤 寛
1. 委員会発足の経緯
日本病理学会と病院病理医協会が一つの団体となり、平成11年に法人化した(社)日本病理学会は、今までにはなかった様々な活動を展開し今日に至っている。
学会構成員中に少なからぬ比率を占める病理医が、その職能を十分に発揮しうる状況を整えることは本学会の重要な使命の1つである。しかしながら、本学会は病理学をキーワードとした学術団体であり、様々な立場の会員から成り立っている。この中で、病理診断の質の向上や精度管理の議論を行ったり、病理医の支援に特化した活動を行うには制約があると感じている会員も少なくない。また、これらのことに学術団体たる本学会が余り精力を傾けることをよしとしない立場もある。
いずれにしても、すでにのべた様に病理医の職能が適切に発揮され、病理医としての責務をはたすことはわが国の医療にとって重要であることは論をまたない。
企画委員会は、診療報酬の包括化が現実のものとなりつつある現時点で、診療報酬もふくめ病理診断そのものが、もろもののものの中に埋没させられることを防ぐためにも、わが国における病理診断はいかにあるべきか、という課題を整理する必要があるという認識のもとに、企画委員会内小委員会(任期1年間のアドホック委員会)として本委員会を設立した。本委員会の目的は、具体的には病理診断の現状の把握と、可能であればそれをふまえた病理医の職能に関する提言を行うことにある。
2. 活動内容
2004年6月10日、11月9日、12月3日の3回の会合をもった。必要に応じてe-mailによる意見交換を行った。
(1) 病理診断の現状把握
わが国の病理診断の200万件/年以上が衛生検査診所経由で行われている。これは各病院において常勤、非常勤の病理医が行っている診断件数をこえるものである。したがって、衛生検査所をぬきにしてはわが国の現状を見わたすことはできないため、参考人として名取恒夫氏(SRL)、上野喜三郎氏(BML / PCL)の会議への同席と資料提供を求めた。両氏はわれわれの主旨に同意し、会議に出席された。関係者の生の声をうかがうことができ、多いに参考になった。その結果、大手の衛生検査所ではすでに高度の精度管理システムを構築しており、それが有効に機能していることが正診率やユーザーからのクレーム数などの具体的な数値で示された。
ダンピング防止に関しては、会社主導で行うことは困難だが、全体状況がその防止に向かえば、それに応じうるとのことであった。
(2) 今後の方針
国民への"安全な医療"の提供という見地からは、迅速で正確な病理診断が全国レベルでなされるべきである。それを推進するため、とくに病院以外の検体、すなわち衛生検査所があつかう検体への対応についての意見交換がなされたが、現時点では委員会内で一致をみるには至っていない。今村委員の札幌での活動経験も披露されたが、全国を視野に入れた更なる検討が必要と思われる。したがって、本小委員会の活動を更に1年延長し、前述の問題点につき会員の声をうかがいつつ、意見集約を行いたい。
委員構成(計9名):
堤寛(藤田保衛大、委員長)、坂本穆彦(杏林大、企画委員長)、村田哲也(鈴鹿中央病院)、森谷卓也(東北大)、吉野正(岡山大)、今村正克(NPO法人札幌診断病理学C)、蒲池綾子(大分医師会立アルメイダ病院)、二階堂孝(慈恵医大)、大林千穂(神戸大)