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第1回病理検査技師との関係に関する小委員会議事録

平成16年12月2日(木)13:30-15:30 於;名古屋市 国際会議場431号室

参加者:中島孝(委員長),坂本穆彦,水口國雄,小野謙三,太田浩良,梅宮敏文,村田哲也

欠席者;横井豊治,佐藤雄一,徳永英博

配布資料(1)日臨技メンバーとの話し合い(坂本)A4サイズ1枚,(2)PNETにおける発言内容要約(村田)A4サイズ1枚,(3)業務移行の実例(水口)A4サイズ1枚,(4)細胞検査士教育セミナー要旨(坂本)A4サイズ1枚,(5)英国における医学生物系技術者報告(中島)A4サイズ11枚,(6)アンケート結果(小野)B4サイズ14枚

議事
1. 中島委員長および坂本企画委員長より,本委員会の経過説明が別紙資料(1)(4)を用いて説明がなされた。
 概略:資料1は平成16年8月25日に行われた病理学会と日本臨床検査技師会(以下,日臨技)との話し合いの内容である。日臨技としては専門病理検査技師を推進する方向にあるが,病理学会との十分な検討が必要であるという認識を持っている。資料(4)は平成16年8月30日に開催された第47回細胞検査士教育セミナーにおけるシンポジウム内容の要約である。病理検査技師の論議がされる背景,医行為との整合性,資格認定方式,病理医と検査技師との協調などが論議されている。

次に村田委員より,病理医のメーリングリストであるPNETでの討論内容が資料(2)を用いて紹介された。
 概略:PNETにおける発言は大部分が病理検査士制度に反対するものであった。その理由として,標本の下見を認めると病理診断がなし崩し的に病理医の手から離れて病理検査士に移ってしまい,保険点数の切り下げ理由とされてしまうこと,若手病理医の研修と競合すること,切り出しも肉眼の大事な診断であることなどの理由であった。

続いて小野委員より,PNETなどを通じたアンケート結果内容が資料(6)を用いて説明された。
 概略:アンケート結果は圧倒的に病理検査士制度に反対であり,その理由などは資料(病理学会員 60名+技師 1名の自由意見)に詳細に記載されている。最終的に89名からの回答が得られ、その結果制度に反対が約60%、賛成が約18%、残りは「わからない」もしくは「無回答」であった。アンケートに取り上げた問題点などをよく検討し、病理医の立場や将来にとって何がメリットかをよく見極める必要がある。決して見切り発車をしてはならないし、はじめに病理検査士(PA)ありきの論議ではいけないと考える。

引き続き水口委員より業務移行の実例について,資料(3)を用いて説明された。
 概略:病理医が近くにいて臨機応変に対応できる環境では,剖検・切り出し・生検などで臨床検査技師にかなり業務を移行している。

さらに中島委員長より資料(5)を用いて英国に於ける取り組みについて説明された。
 概略:英国では王立大学病理と生物医学協会の合同ワーキンググループで医学生物系技術者に標本記載や切り出しなどの業務拡大を行ったが,その結果病理に関する標準低下や患者への不利益などの問題は起こらなかった。病理検査士制度導入の利点が説明された。英国でも技師の業務拡大は大学が先行して行った経緯がある。

最後に中島・坂本両委員より,本小委員会に先立って開催された企画委員会での議論内容が報告された(資料なし)。
 概略:企画委員会でも病理検査士制度導入に慎重な意見があり,また,制度内容に関しても理解の程度がさまざまであった。それに対し,制度について改めて原点に立ち返り,病理診断現場の現状分析や制度導入の有無による利点や不利益点などを学会員に提示する必要がある。

2. 上記に関して、委員間で確認や質疑応答がなされた。
1) 米国に於けるPA制度について
・ 米国に於けるPA制度について,PAの協会(AAPA)と連絡し,早い時期に米国に視察に行くことが必要であろう(佐藤・中島両委員が視察に行く)。
・ 米国のPA養成機関は現在6大学あり,病理医とHistotechnologist(HT)の中間的存在(社会的地位や給料)となる(水口)。
・ 米国におけるPAは大学院修士コースであり,基本的に生物科学系の学士から入る(太田)。
・ 米国では病理の社会的認知度があり,制度も出来ている。その上でのPAの話であり,病理医の認知度が低いわが国の現状とはそぐわない(小野)。
・ 切り出しや下見を抜きにする制度では,現状の臨床検査同学院臨床技術士(1級,2級)との整合性も問題となる。臨床検査医学会と技師会との関係もある(水口)。

2) 病理検査士制度のあり方について
・ 病理検査に於ける業務内容の分析から,病理医と技師との間でワーク・シェアリングのような形ができないか(中島)。
・ 現状のように病理が標榜科でなく,保険制度や法令でも病理医の身分・地位が定まっていない状態で病理検査士制度を導入すると病理医の地位低下に繋がる危険性がある(小野、村田)。
・ 病理医の必要性,特に複数常勤の必要性について病理学会から各病院を啓蒙する必要がある(小野)。
・ 診療報酬について,切り出し(肉眼診断)を病理検査士が行うと,その分の医師に対する報酬(Doctor fee)が減額される(病院に対する報酬Hospital feeになる)。これに関し,要望中の新しい病理診断保険点数に関する説明があった(水口)。
・ 現場の検査技師の意見を聞く必要がある(水口,小野,太田)。
・ 病理検査士制度の利点として,遠隔病理診断における送信側の技量保証に有用(村田)。
・ 病理検査に関し,病理医業務と技師業務のグレーゾーンがある。各施設では施設内ルールがあり,業務分担をしているが,その内容については施設間格差がある。その結果,病理検査士に関する意見も多様となる。もっと現場の現状を分析し,意見を聞く必要がある(梅宮)。
・ 現状の認定技師制度(血液,輸血など)は臨床検査技師の業務領域であり,技師教育カリキュラムにも入っている。それに対し病理の標本観察は技師教育カリキュラムになく,病理医固有の業務である(梅宮)。
・ 臨床検査技師の高学歴化が進む中,わが国でも病理検査士を修士コースとして考えることは出来ないか(坂本)。

3) わが国の病理医のあり方について
・ 病理医の業務拡大,標榜科に向けて行動する必要がある(中島、坂本)。
・ 標榜科となるためには,患者との接点を持つ必要がある(坂本)。
・ 病理医も「時間を作る」観点が必要では。そのための業務委譲を考える(坂本)。

4) その他
・ 委員会の内容・議事録は病理学会ホームページで報告する(全員)。
・ 病理検査士制度に関するアンケートを改めて学会として行う。アンケートのひな形は委員会で作成する。経費節減のため,アンケートは支部単位の交見会などで配布する(全員)。
・ 病理学会総会に於ける病理検査士制度に関するシンポジウムやワークショップの時間帯を,多くの人が参加しやすい時間帯にする(全員)。

3.最終的に病理検査士制度について,十分な論議と再検討が必要と思われた。

4.次回は平成17年2月11日に東京で委員会を開催する予定である。

(文責:村田、中島)