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病理専門外来をもつ病院が少ない理由 |
病理医から直接病理診断結果を聞いていただくことの重要性や、その具体的な方法は別項でご理解いただけると思います。このような機会がすべての患者 さんやご家族に与えられる状態が理想ですが、現実に病理専門外来をもつ病院はごくわずかです。ここでは、病理診療外来開設の難しさについても触れておきた いと思います。
現在、小児科医、産婦人科医、麻酔医の不足が問題になっていますが、病理医の数はこれらの医師よりもっと少ないのが現状です。全国の病理専門医の数は2200名程度、全人口に対する病理専門医の割合は0.0016%(米国では0.005%)、全医師数の中で病理専門医の占める割合は0.76%(米国では1.6%)です。この少ない病理医が全ての病理診断を担い、さらに学生や臨床研修医の教育にもあたっています。大きな病院にたった一人しかいない病 理医に、患者さんに直接お会いするように求めても難しい、という現状があるのです。日本の医療の質を確保するために、病理診断医をどのように増やしていく か、日本病理学会は真剣に考え、取り組んでいます。
患者さんの治療方針を決定する上でとても大切な病理診断に関して、現在の保険制度ではとても低く設定されています。詳細な診断をしようとすると、病院経営上は赤字になる可能性すらあります。まして、病理診療外来を開設しても、病院の儲けに決してつながらないのです。病院経営者の「患者さんのための、より良い医療サービスを提供する」という考え方がなければ、開設はできません。また、病理解剖の費用はすべて病院側の負担になっています。医療は儲けるための商売ではありませんが、採算のとれないことを積極的にやれ、と言われても難しい病院経営者の立場も理解していただかねばなりません。
※平成20年4月1日より病理診断科は標榜科となりました。今後とも皆様のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
日本では、医師免許を取得すれば、医療法第70条第2項で規定された診療科名を自由に標榜することができます(麻酔科だけは厚生労働大臣の認可が必要です)。残念ながら、病理科はこの標榜科に入っておらず、診療科として認められていません。このため、病理診療外来を開設しても、院外に看板を掲げることが 許されていないのです。医療における病理診断の重要性を考えると、医療機関における病理科の有無を標榜することは、患者さんにとって大切なことだと考えています。日本病理学会では、病理科が標榜科となることを要望する活動を続けています。患者さんが病理医を訪ねるようになれば、病理科の標榜が必然となります。病理科の標榜を実現し、医療の質をより一層向上させるために、患者・市民の皆さんのご支援が必要です。よろしくお願いします。
日本の医療をより良くしていくために、病理医の仕事を患者・市民の皆さんにご理解いただき、病理診断をより身近なものに変身させていただくことを願っております。
1.病理診断の特色ならびに病理診断を病理医から直接お聞きになる意義について