第2部の根拠となる実証解析データ
[実証データ ①] 急速凍結までの時間・保管温度のゲノムDNAの品質に対する影響
- 同一症例手術検体の同一部位 (非癌部)より採取した2-3mm角ほぼ等大の組織片において、急速凍結までの時間・保管温度を変えたのち (#1-#7)、フェノール・クロロフォルム法でゲノムDNAを抽出し、その品質を比較した。
- 比較する急速凍結までの処理方法は以下のとおり。
- #1: 摘出後速やかに液体窒素により急速凍結
- #2: 4℃ 3時間保管後液体窒素により急速凍結
- #3: 4℃ 6時間保管後液体窒素により急速凍結
- #4: 4℃ 24時間保管後液体窒素により急速凍結
- #5: 室温 3時間保管後液体窒素により急速凍結
- #6: 室温 6時間保管後液体窒素により急速凍結
- #7: 室温 24時間保管後液体窒素により急速凍結
- DNAの品質評価は、アガロースゲル電気泳動、2200 TapeStation システム (Agilent)によるDNA integrity number (DIN)測定、増幅長1241 bpならびに2823 bpのゲノムPCR反応により行った。
- いずれの処理方法においても、2800 bp程度のDNA断片のPCR増幅が可能であったが、肝TSP-1の4℃長時間保管ならびに室温保管においては、アガロースゲル上でゲノムDNAの剪断化を認める (赤矢印)。
- 肝TSP-1・TSP-12においては、急速凍結までの時間・保管温度の差異によるDIN値の低下が顕著である。
- DNAの品質には臓器による差異があることがうかがえる。消化管検体においては、肝に比して4℃長時間保管ならびに室温保管によるDNAの品質への影響が概して軽度である。
- 但し、検証した全検体における解析でも、4℃24時間保管ならびに室温保管によりDIN値の低下は有意であった (P<0.05)。
- 摘出後急速凍結までを可及的に速やかに行うべきであり、 直ちに処理が出来ない場合も4℃短時間の保管で急速凍結を行うことが望まれる。
- 実証データ ①の限りでは4℃6時間の保管を妨げるものではないが、[実証データ ②]において4℃6時間で一部の臓器においてはRNAの品質低下が認められるので、4℃保管3時間程度を目安に急速凍結を行うべきと結論した。
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