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CPCレポート作成指導に関する提言 |
平成14年10月29日
厚生労働大臣 坂口 力 殿
I.緒言
新医師臨床研修制度導入が全人的視点をもった医師の養成と医療の質の向上に資する点を高く評価し、(社)日本病理学会はこれを積極的に支援する。提案された研修項目の中で特に、必修項目とされているCPCレポート作成・症例呈示については、指導者としての病理医の関与が重要と考え、(社)日本病理学会としては、この項目に関して、以下のような提言を行いたい。提言の目的は、すべての研修医が質の高い研修を受けることができるための制度設計がなされる事への期待である。
II.CPCレポートの定義
CPCレポートとは、研修医が自ら診断、治療に関与し、臨床的な問題点の解決のためにご遺族から病理解剖の許諾を得た例について、病理解剖に立ち会い、病理医(日本病理学会専門医が望ましい)の指導のもと肉眼及び組織所見をまとめ、臨床経過をあわせて症例を総括した報告書と定義する。
III.CPCレポート作成の教育的意義
研修医は、病理解剖を通じて、臨床診断の妥当性、死因を含めた病態、治療効果等を把握し、診療の最終的な評価ができる。さらに、症例の病理像を把握した上で、臨床像とあわせて総括し、これを呈示することにより、臨床医としての知識及び技能の向上をはかることができる。また、病理解剖の許諾を得ることと同時に、ご遺族に病理解剖で得られた結果を説明することを通じて、医師としてとるべき態度を学び、かつ持つべき倫理観と人間性を涵養することができる。
IV.CPCレポート作成の一般目標(GIO)と行動目標(SBOs)
GIO:研修医が、病理解剖を通じて、臨床経過と疾患の本態の関連を総合的に理解する能力を身につける。
SBOs:
1.病理解剖の法的制約・手続きを説明できる。(想起)
2.ご遺族に対して病理解剖の目的と意義を説明できる。(解釈)
3.ご遺体に対して礼をもって接する。(態度)
4.臨床経過とその問題点を的確に説明できる。(問題解決)
5.病理所見(肉眼・組織像)とその示す意味を説明できる。(問題解決)
6.症例の報告ができる。(解釈)
V.CPCレポート作成指導の実施に関する提言
1.CPCレポートの質の向上に資するために、(社)日本病理学会はレポートの標準的書式等を提示する。
2.CPCレポート作成の指導は日本病理学会認定病理専門医(以下病理専門医)が行うことが望ましい。
3.CPCレポート作成の指導にあたる病理専門医に対しては、研修指導医と同等の処遇が望ましい。
4.研修指定病院の研修委員会には、病理専門医の参加が必要である。
5.研修に必要な病理解剖数の確保については、研修委員会が責任をもつべきである。全ての研修医に均等にCPCレポート作成の機会が与えられる様な工夫が必要である。
6.病理解剖施設がない、あるいは病理専門医のいない研修指定病院にあっては、ご遺体を他施設に移送して病理解剖を行うなどの工夫が必要である。
7.CPC(病理解剖報告会)の形式、研修医の発表方法に関しては、(社)日本病理学会から、標準的な様式を提示する。
*なお、これらの諸問題の対策のためにも、研修指定病院の選定にあたっては(社)日本病理学会認定病院、登録施設をご参照いただきたく、お願い申し上げます。