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「病理解剖」について日本病理学会の見解2

「病理解剖」について日本病理学会の見解
病理解剖は、顕微鏡での観察のみならず
ご遺体の肉眼的観察に関しても医行為である「診断」にあたるため
病理医が行うべきである

令和6年3月22日
一般社団法人日本病理学会 理事長 小田義直
同 医療業務委員会 委員長 佐々木毅
同 剖検・病理技術委員会 委員長 柴原純二

 日本病理学会ではタスクシフト・シェアに関連して、令和4年に「病理解剖について日本病理学会の見解」を公開したところですが、タスクシフト・シェアとは別に、再度病理解剖に関して議論し、その見解をまとめましたので、ここに再度、病理解剖についての病理学会の見解を公開いたします。

 現在、「解剖」に関しては昭和24年に制定された死体解剖保存法(昭和24年 法律第204号)の第2条に、『死体の「解剖」をしようとする者は、あらかじめ、解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けなければならない』とあります。また第2条―2に『保健所長は、公衆衛生の向上又は医学の教育若しくは研究のため特に必要があると認められる場合でなければ、前項の規定による許可を与えてはならない』とされています。しかし本法律の当該部分は、昭和24年から全く見直しがなされておらず、「解剖」も「医学教育や研究」に重きを置いた、広く一般的な「解剖」を指しているものと考えられます。

 一方「病理解剖」に関しては、時代とともにその要求事項が大きく変化しており、現在は、すべての病理解剖に診療後の死因の究明が求められております。この死因究明のためには、顕微鏡での病理組織の観察、診断のみならず、6年間の医学教育、2年間の臨床研修およびその後の病理医としての深い経験・医学的知識に基づいた肉眼的診断や、疾病に関する医師としての深い知識が求められており、特にご遺体から臓器を摘出する前の臓器間のダイナミックな変化の観察や医学的知識に基づく肉眼的診断が、非常に重要視されるようになってきております。臓器摘出時の所見は、医療安全(医療事故調査)の検証にも必要なものです。

 日本病理学会では、『病理解剖とは、病理解剖開始前の傷病に関する最新知識を含む医学的知識に基づいた臨床情報の把握にはじまり、ご遺体の外表所見や局所での摘出前、摘出中、摘出後の臓器の肉眼的診断、固定後臓器のさらに詳細な検討に基づく組織標本作製、組織学的検討を経て、病態および死亡に至る原因などについて医学的かつ病理学的知見を含む報告書を作成するまでの、病理医による一連のプロセスからなる』と考えています。これらすべての段階が病理医による医行為に該当すると考えており、単に病理組織像を顕微鏡で観察して、病理診断報告書をまとめる部分だけが医行為であるという見解には、強い違和感を覚えます。

 病理医は適切な病理解剖の実施に全責任を担うことができる唯一の存在です。したがって臨床検査技師等の介助、支援は適宜受けるとしても、全てのプロセスに参画し、監督する実施主体者として、病理解剖に取組むべきであると考えます。