このページでは、Javascriptを使用しています
  • 日本病理学会について
  • 市民の皆さまへ
  • 専門医
  • 病理医への扉
  • 刊行物

HOME > 日本病理学会について > 平成14~17年度理事長 森 茂郎  ごあいさつ


平成14~17年度理事長 森 茂郎  ごあいさつ

(社) 日本病理学会理事長  森 茂郎

Dr.Shigeo Mori

日本病理学会HPをご覧きいただき,ありがとうございます。


私たちが専攻している「病理学」という領域は、患者さんのひとりひとりが個別的に持っておられる病気の正しい診断,そのための診断法の開発、診断や 治療の根本となる病気の成り立ちの解明、あるいは不幸にして病気で亡くなられた方の死因を解明して次の医療に役立たせる事、などを主な任務としておりま す。私たちは、いささか地味ではありますが欠かす事の出来ない重要な領域を担っているという誇りを持って任務にあたっております。


いつの時代も、患者さんにとっては、確実な診断にもとづいて治療法が決められる事が求められているわけですが、特に現代においては、事実・根拠にも とづいた治療、という考え方がきわだって強いものになっています。そのような環境の中で病理診断は、腫瘍(がん)をはじめとする多くの病気の診断におい て、最終的かつ決定的な役割を果たしてきております。私たちはそのためのプロの集団であることを自負しています。


病気で亡くなられた方については、病理解剖を行う事によってはじめて、その死の原因を明らかにする事ができます。病理解剖によって明らかにされた医 療への反省は、次の患者さんの治療に反映されます。個人に取っては取り返せない「死」が、残された者たちが健康に生活するために役立てられるわけです。こ の、死因の検証という任務も、医療情勢の近年の変化の中で特にその役割の重要性が再確認されつつあります。しかし我が国にはこの死因の検証という思想が、 欧米にくらべて著しく弱い、という現実があり、亡くなられた方のなかで解剖による検証がなされる方の割合は先進国の中で最低水準です。我が国の医療の発 展、また市民に信頼された医療を保証するためにこの状況の改善が必要である、と私たちは考えており、私たちはそのための努力を継続してゆく所存です。


医療は現在激動のなかにあり、病理学もその例外ではありません。20年前の常識の逆が今の常識,という事は決して稀でなく、そのなかを歩いてきた人 間として個人的な感慨が多々あります。とはいってもこの激動は、基本的には患者さんのためのよりよい医療、という方向に道筋がついていると受けとっており ます。この激流の中で、病理学に対して何が求められているかを的確かつ鋭敏に把握し、その責務を果たしてゆくことが、当たり前ではあるが最も肝要な責務で あると考えております。


私たちは病理学を閉ざされた専門領域としての見地だけからとらえるのではなく、患者さん、医療従事者、医学研究者、行政、社会と意見を交換し、この 方々の理解と支持をいただきながら、手を携えて発展して行く事が必要と考えています。このような環境下ではじめて、我々の持つ任務がよい形で果たされる、 と考えております。本HPは、そのような理解に立って編集されております。


読者の皆様にはそれぞれのお立場から----病理学を専攻する方々は当然として、これ以外に患者さんの立場から、市民の立場から、あるいは医療従事 者、研究者の立場からも----本HPをおおいにご利用いただきたく存じます。御意見、お問い合わせ、私どもへのご注文などがありましたら、ご遠慮なく事 務局まで御申し越しください。


本HPはすべてボランティアの会員が作成したものですので、行き届かない事も多々あると思いますが、彼らの熱情をご理解いただきまして、ご寛容いただければ幸いです。


みなさまのご支援のもとに本HPが成長してゆく事を祈念しております。各位の病理学へのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。



(2005年8月記)