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病理解剖について

市民の皆様へ
  
「病理解剖」という言葉は皆様にとって耳慣れたものではないかもしれません。しかし、日本病理学会ではこの病理解剖の重要性とその役割を医療関係者のみならず、一般の方にも広く知っていただきたいと考えてまいりました。この件につき、本学会剖検・病理技術委員会で2014年より議論を重ね、この度「病理解剖によってわかること・できること -こんな場合には病理解剖を- 」を策定、公表する運びとなりました。
市民の皆様には、是非ご一読をいただき、病理解剖、並びに病理医の活動についてご理解を賜れれば幸いです。

平成27年7月
一般社団法人日本病理学会   理事長 深山 正久
     剖検・病理技術委員会委員長 柳井 広之




病理解剖の必要性のアピール
病理解剖によってわかること・できること
-こんな場合には病理解剖を-



病理解剖とは

病理解剖とは、病気のために亡くなられた患者さんのご遺体を解剖し、臓器、組織、細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うことです。これによってきわめて精度の高い病理診断ができ、死因を正しく理解し、治療の適切性についても検討することができます。
病理解剖の実際については、別添のQ&Aをご参照ください。

なぜ病理解剖が必要か

医学の急速な進歩によって、さまざまな疾患に対して新しい診断法や治療法が開発され、現代の医療は大変高度かつ複雑なものになっています。その一方で、患者さんに起こる全ての出来事を予測し、対応することは現在でも難しいと言わざるを得ません。したがって、より確実な、よりよい医療を行うために、診療の効果、問題点を絶えず検証する必要があります。この医学的検証は治療中の患者さんだけでなく、亡くなられた患者さんも貴重な対象となります。このために病理解剖は非常に重要なのです。

病理解剖で得られること

病理解剖によって得られた結果を亡くなられた患者さんご本人に直接還元することはかないません。しかしご遺族にとっては、その患者さんがなぜ亡くなったのか、生前はどのような状態であったのかを詳しく知ることができ、身近な人を亡くしたことを受け入れる助けになるでしょう。
医療従事者にとっては、病理解剖を通して、患者さんが亡くなった原因や生前の病気の状態が明らかになり、診断の妥当性や治療効果を詳しく検証できます。このことは、同じ様な病気の患者さんによりよい医療を提供するために大変役立ちます。また、病理解剖によって、生前には見つかっていなかった疾患や未知の疾患についての重要な情報を得られる可能性もあります。
さらに、数多くの患者さんの病理解剖から得られた結果を解析することで、その知見はより一般的なものになります。死因の正確な統計や疾患についての傾向を把握することは、疾患の原因解明や予防についての重要な情報となります。


 病理解剖が必要な場合(具体例) 

病気で亡くなられた全ての方が病理解剖の対象となり得ますが、具体的には以下に挙げるような場合が考えられます。

1. 診療中の病気の経過や死因について、臨床的には説明がつかない、あるいは、病理解剖以外の方法では確実な説明がつかない場合*
2. 病理解剖によって、予期されなかった合併症が明らかになると考えられる場合
3. 診療行為中、あるいはその直後に予期されない死亡をされた場合**
4. 治療中の方で、院内において突然死あるいは予期されない死亡**をされ、診療行為と関係がないと考えられると同時に、司法解剖の対象とならない場合***
5. 治験、臨床研究に参加している方が亡くなられた場合
6. 臓器移植のドナー(臓器提供者)、ならびにレシピエント(臓器移植を受けた方)が亡くなられた場合
7. 病理解剖の結果によって、ご遺族や一般の人の不安や疑念が解消できると考えられる場合
8. 妊産婦の方が亡くなられた場合(全例)
9. 全ての周産期あるいは小児死亡例
10. 職業、あるいは環境に関連する原因で亡くなられたと考えられる場合
11. 心肺停止状態で搬送された方で、その死亡について事件性がなく、司法解剖などの対象ではない場合****

* 死因については、臨床的な検討や死亡時画像などに基づく方法によっても判断されるが、確実な診断を得るには病理解剖を行うことが望ましい。

**医療法に定められた医療事故調査制度の対象になる死亡例が含まれる。調査制度の「予期されない死亡」の定義については、平成27年厚生労働省令第100号(平成27年5月8日付交付)を参照のこと。

*** 診療中の患者さんが治療中の疾患あるいは治療行為に関係なく突然、あるいは予期せず死亡した場合をさす。例えば就寝中に死亡していた場合などが挙げられる。

**** 司法解剖および「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」の対象となる場合(いわゆる新法解剖)は病理解剖の対象とならない。



平成27年7月
一般社団法人日本病理学会


【病理解剖の実際について Q&A】

Q1 病理解剖はどのように行われますか?

A1 病理解剖はご遺族の承諾のもとに、病理診断を専門とする医師(病理医)と医学的な専門知識を持った助手(臨床検査技師など)により行われます。病理解剖は院内の専用施設で、通常2~3時間かけて行われます。当然ですが、ご遺体は畏敬の念とともに取り扱われ、慎重に検索が行われます。
主に胸部、腹部を開き、臓器を取り出して検索し、必要に応じて脳や脊髄も取り出して検索します。また、生前の経過によっては、その他の組織、血液なども採取して調べることがあります。


Q2 病理解剖が終わった後のご遺体の様子はどのようになっていますか?

A2 病理解剖の際には胸部から腹部にかけてメスで切開します。着衣の状態では傷がみえない場所で切開を行い、解剖後は丁寧に縫合します。脳の検索を行う場合には頭部も切開しますが、正面からは切開した傷が見えないようにして、同様に縫合します。解剖終了後、ご遺体は直ちにご遺族のもとにお返しいたします。


Q3 病理解剖で取り出された臓器はどのように取り扱われますか?

A3 摘出された臓器は肉眼観察および写真による記録が行われた後、その全部もしくは一部をホルマリンの中で保存します。その一部は、顕微鏡で観察するための組織標本(パラフィンブロックおよびスライドガラス標本)を作製し、病理医が各臓器の異常を詳細に調べます。必要に応じて電子顕微鏡検査や遺伝子検査などが行われることもあります。
臓器は一定期間病院で保管された後、法律やガイドラインの定めるところに従って取り扱われます。
組織標本はさらに長期間保存されますが、保存期間は病院により異なります。


Q4 病理解剖の費用を遺族が支払う必要がありますか?

A4 病理解剖に必要な費用は原則として病院が負担します。患者さんやご遺族が支払う必要はありません。


Q5 病理解剖の結果を知ることができますか?

A5 病理解剖でご遺体およびその臓器を調べた結果は、生前の症状や検査結果と総合的に判断して「病理解剖診断書」としてまとめられ、1カ月から数ヶ月後に主治医に報告されます。
ご遺族の方も、主治医を通して病理解剖診断書について知ることができます。