2008年8月アーカイブ
2008年8月 7日
病理解剖に国費負担を!
藤田保健衛生大学医学部第一病理学講座
堤 寛
広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態情報医科学講座病理学研究室
井内康輝
堤 寛
広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態情報医科学講座病理学研究室
井内康輝
提言:(社)日本病理学会は病理解剖の国費負担を厚生労働省に要求すべきである。
病理解剖は従来、費用全額を病院負担の形で営々と積み重ねられ、病態解明、病理学的研究、死因追求、正確な死因統計など、さまざまな側面で国民の医療の 向上に大きく貢献してきた。死後の検索であるため、診療報酬は適応されず、厚生労働省からの財政支援も一切ないのが現状である。数年前まで文部科学省から 国立大学にのみ供出されていた解剖体経費は、研究・教育の名目だった(独立行政法人化を期に、項目指定がなくなり、教育関連費用として、現在、各大学はそ れぞれの考えに従って、病理解剖を含めて分配できる)。医療・公衆衛生に多大な貢献を果たす病理解剖が「病院のボランティア」の形で成り立つのはとても健 常とはいえない。
先進諸国の中での"剖検率"は最低レベルにあるうえ、画像診断の進歩を背景に、病理解剖は年々減り続けているのが現状である。臨床医の病理解剖に対する意欲の減少は否めないところである。しかし、病理解剖をこれ以上減らし続けても本当によいのだろうか。
新医師卒後研修制度の中に、病理解剖症例を利用したCPCレポートの作成が必修化されているし、日本内科学会も内科専門医や研修病院の指定に一定の病理解剖を義務化している。病理解剖が病態を全身的・統合的に捉える研修の場として最適であることに異論はなかろう。
一方、厚生労働省は「診療関連死」の死因究明のための新制度(医療安全調査委員会)を立ち上げようと模索しているが、原則として、病理解剖として行われ た結果を、法医医師、臨床医や第三者が客観的に判断することが念頭に置かれている。この解剖は病理解剖と法医解剖の中間的意義をもつともいえよう。当然な がら、この解剖には財政支援がある。
法医解剖のうち、司法解剖約5,000体は国が財政保証している。行政解剖(監察医制度のある地域)および承諾解剖(監察医制度のない地域)は、原則と して、地方自治体ないし警察が剖検費用を負担している。しかし、法医医師の人材不足と法医解剖実施の場が大学の法医学講座に限られる現実を背景に、ことに 大都市圏以外の地方では、救命救急部門での死亡例を中心に"行政解剖的病理解剖"が実施されているのも現実である。この場合は、費用は病院負担となってい る。
こうしたアンバランス・不公平感・不合理を是正し、国民の健康と安全の増進に貢献し、医療の質の担保・向上に資する病理解剖を促進するために、(社)日 本病理学会は、今こそ、病理解剖の費用負担(年間2万体x25万円=50億円)を国家(厚生労働省よりは、より横断的な内閣府が適切か?)に要求すべきで ある。
2008年8月 5日
技術講習会-分子病理学の基礎技術-8 の受講者の募集について
-病理を志すものが知っておくべき病理技術-
近年、様々な疾患に関する分子生物学的な情報が飛躍的に増え続け、病理診断に携わる者も多くの新しい知識を要求される場面が多くなってきました。今後さら にこのような傾向は強くなり、伝統的な病理形態学から得られる知見と新しい情報との融合が必要とされていくことと思われます。これからの時代、病理学者は 先端的研究をするとともに、伝統的な技術と新しいテクノロジーの両方を用いて、これまでに蓄積された情報と医科学の最先端の知見を結びつけるという非常に 重要な役も担うものと考えます。
そこで第8回日本病理学会病理技術講習会では、最新の病理技術・分子病理学といったkey wordにとらわれず、病理学者が知っておくべき技術について伝統的な手法から最新の技法までを広範にご紹介することになりました。まず前半で、最新の免 疫組織化学的所見の解釈法、進歩の著しい神経系疾患の病態解析に古典的染色法がどれほど役に立つか、LAMP法の解説など、比較的どこの研究室あるいは病 理検査室でも応用可能な技術の紹介と、病態解析、病理診断への応用について概説していただく予定です。日常の病理診断にも有用な情報が間違いなく得られる ものと思います。
また後半では、最新の技法を駆使して新たな研究分野を開拓され、素晴らしいお仕事を次々と展開されているお二方に、技術的な側面を含めてご研究の一端を病 理医に対するメッセージとして紹介していただきたいと思います。日頃あまりなじみのないお話かも知れませんが、形態学を基本にした診断や病態解析を志す私 たちに、大きなインパクトを与えてくれるものと確信しています。
下記の要領で参加者を募集いたしますので、会員諸氏にはふるってご応募されますようにご案内いたします。なお、本講習会の受講により日本病理学会病理専門医資格更新のための生涯学習単位5単位が認められます。
記
1. 日時:2008年11月19日(水)
第54回日本病理学会秋期特別総会前日13:00-17:20
2. 場所:松山市総合コミュニティセンター(第54回秋期特別総会会場)
3. 演題と演者
(1)「これからの免疫学的表現型検索 - 悪性リンパ腫の診断に際して」
一迫 玲(東北大学・血液病理学分野)
(2)「銀染色で区別する神経変性病変-温故知新-」
内原 俊記(東京都神経科学総合研究所・神経学)
(3)「LAMP法の迅速病理診断への応用」
池田 聡(土浦協同病院・病理部)
(4)「バイオイメージングの基礎と診断への応用」
大場 雄介(北海道大学・病態医科学分野)
(5)「オートファジー:新しい生命現象とその検出方法」
水島 昇(東京医科歯科大学・細胞生理学分野)
4. モデレーター:北川 昌伸(東京医科歯科大学・包括病理学分野)
5. 講義担当者:5名
6. 募集人員:120名
7. 受講料:5,000円(ハンドアウト代含む)
8. 応募、問い合わせ、参加決定:
(1)受講希望者は、受講を希望する旨とともに、氏名、所属、会員・非会員の区別、連絡先(住所、電話番号、FAX番号、E-mail address等)を記載の上、以下の応募先までお申し込みください。
応募先:社団法人日本病理学会事務局
TEL:03-5684-6886 FAX:03-5684-6936
E-mail:jsp-admin@umin.ac.jp
内容の問い合せ先:北川昌伸(東京医科歯科大学・包括病理学分野)
TEL:03-5803-5173 FAX:03-5803-0123
E-mail:masa.pth2@tmd.ac.jp
(2)学会員は先着順に参加決定いたします。非会員は10月15日時点での空き分について参加を受け入れます。
(3)プログラム(予定)
13:00~13:05 | 「講習会のねらい-モデレーター」 北川 昌伸(東京医科歯科大学・包括病理学分野) |
13:05~13:55 | 「これからの免疫学的表現型検索 - 悪性リンパ腫の診断に際して」 一迫 玲(東北大学・血液病理学分野) |
13:55~14:45 | 「銀染色で区別する神経変性病変-温故知新-」 内原 俊記(東京都神経科学総合研究所・神経学) |
14:45~15:20 | 「LAMP法の迅速病理診断への応用」 池田 聡(土浦協同病院・病理部) |
15:20~15:35 | 休憩 |
15:35~16:25 | 「バイオイメージングの基礎と診断への応用」 大場 雄介(北海道大学・病態医科学分野) |
16:25~17:15 | 「オートファジー:新しい生命現象とその検出方法」 水島 昇(東京医科歯科大学・細胞生理学分野) |
17:15~17:20 | 講習会のまとめ |
<主催者>
日本病理学会研究推進委員会
第56回(平成22年度)秋期特別学術集会会長ならびに第100回(平成23年度)
学術集会会長の募集について(公募のお知らせ)
社団法人日本病理学会は、第56回(平成22年度)秋期特別学術集会会長ならびに第100回(平成23年度)学術集会会長を以下のとおり募集いたします。
学術評議員各位
平成20年7月
社団法人日本病理学会
理事長 長村 義之
社団法人日本病理学会
理事長 長村 義之
日本病理学会秋期特別学術集会(秋期特別総会)の会長ならびに学術集会(春期総会)の会長は、定款施行細則の定めるところにより、いずれも理事会が選考し、総会において決定しています。
ここに、第56回(平成22年度)秋期特別学術集会会長ならび第100回(平成23年度)学術集会会長を、下記の要領により募集いたします。
記
1.応募は自薦であること。
2.応募者は、第56回秋期特別学術集会会長の場合は平成22年11月1日に、また、第100回春期学術集会会長の場合は平成23年4月1日にそれぞれ満65歳以下の日本病理学会学術評議員であること。
3. 第56回(平成22年度)秋期特別学術集会会長の応募は、関東地区以外からの限定とすること
(なお開催地は、会長所属機関と異なる利便性の高い場所を選択することもできる)。
4. 応募者は、日本病理学会学術集会改革案(平成18年5月1日決定 会報221号平成18年6月掲載)の主旨を踏まえて、所定の用紙に学術集会に対する考え 方、学術集会の具体的な実行計画、日本病理学会及び関連学会において近年に行った主要な学術活動等を記載すること。
5. 応募の締切りは、平成20年9月30日(消印有効)までとすること。
なお、所定用紙の交付または本件についての質問がありましたら、本学会事務局までお問い合わせください。