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進行肺癌に対するPD-L1免疫染色についての留意事項について

日本病理学会会員の皆様
肺がんの病理診断に関わる医療従事者の皆様
日本病理学会
PD-1/PD-L1ガイドライン委員会
谷田部恭、森井英一

 2015年12月、そして2016年 12月に、免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(商品名 オプジーボ)、ペムブロリズマブ (商品名 キイトルーダ)がそれぞれ切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に承認(適応拡大)されました。特に、ペムブロリズマブの投与にあたっては、承認されたコンパニオン体外診断薬 (PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」) を用い、腫瘍細胞におけるPD-L1陽性を確認することが求められています。これまでの臨床試験の結果で、一次治療ではPD-L1陽性細胞≧50%、二次治療以降は≧1%の腫瘍に対して有効性が示されており、病理医は腫瘍細胞におけるPD-L1発現状態を報告することを求められるようになります。また、一次治療にも組み入れられるため、EGFR変異検査、ALK再構成検査と同じく、進行肺癌であれば、診断時に検査することが推奨されています(2016年版 肺癌診療ガイドライン)。このPD-L1(22C3) 免疫染色を施行するにあたっては以下の点に留意する必要があります。
 1. ペムブロリズマブに対する効果予測はPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」で行うこと。
 2. PD-L1(22C3)発現の報告には、少なくとも3つの基準を明記すること。

1. ペムブロリズマブに対する効果予測はPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」で行うこと。
 現在、肺癌における免疫チェックポイント阻害剤として ニボルマブも保険承認されていますが、この体外診断薬はPD-L1 IHC 28-8 pharmDx「ダコ」*で、ペムブロリズマブのPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」とは異なります。両者の違いは抗体クローンが異なるのみならず、陽性判断基準が異なるため、現時点では一方の免疫染色で代替えすることはできません。また、体外診断薬はDako自動免疫染色装置LINK48で施行する必要があり、施設面での要求もあります。詳細については、地方ごとに必要条件や評価方法などの講習会が予定されていますので、発売元のDakoもしくはMSDにお問合わせの上ご参加ください。

2. PD-L1(22C3)発現の報告には、少なくとも3つの基準を明記すること。
 PD-L1(22C3)発現の報告には、No expression (<1%), low expression (1-49%), high expression (≧50%) の3つの基準が明記される必要があり、参考値としてどの程度陽性率を示したのかも併記することが推奨されています。例えば、生検された腫瘍で腫瘍細胞がPD-L1 80%の陽性率を示した場合は、EGFR陰性、ALK再構成陰性を確認して、ペムブロリズマブによる一次治療が可能です。一方で、20%の陽性率の場合は、一次治療では使用できませんので、2次治療以降で用いることにな成ります。このように、PD-L1発現の程度によって、ペムブロリズマブをいつ使うことができるのか判明します。

 現在、殺細胞性抗がん剤治療、分子標的治療とならんで免疫チェックポイント治療についての目覚ましい効果が報告され、その一部は肺癌に代表されるように病理医のPD-L1免疫染色の評価が必要となっています。これらのPD-L1免疫染色について日本病理学会はPD-1/PD-L1ガイドライン委員会を立ち上げるとともに、日本肺癌学会との合同委員会を通じて、会員および関連する医療従事者に有用な情報を随時提供していきたいと思っております。

*有用な情報を提供する体外診断薬との位置づけであり、投与に当たってはその染色結果によって患者選択を必ずしも行う必要はない。これに対して、ペムブロリズマブはPD-L1発現によって患者選択を行う必要があり、投与前には必須となる(コンパニオン診断薬)。