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ホルムアルデヒドQ&A

よくある質問一覧
Q 01: ホルマリンの一括管理を検査科にして、手術室・内視鏡室からホルマリンを排除して生食等に臓器等を入れて、検査科に運び検査科でホルマリンに浸けてもらえないか。

A 01: ホルマリンの一括管理を行うことは望まれるが、検査科(病理診断科)がそれを行うか否かは、当該科の人的余裕などが考慮されるべきである。
採取・切除された組織・臓器は、速やかにホルマリン等固定液に浸透するのが望まれる。生食水は組織固定あるいは保存に適しておらず、むしろ弊害もあるので、例外(*1)を除いて、組織は生食水に漬けない。
(*1 乾燥を防ぐ目的で、組織小片を生食浸透ガーゼで、短時間包む、など)

Q 02: 手術による摘出臓器及びバイオプシー臓器等の適切なホルマリン固定までの流れとそれに要してもよい時間等の原理を教えて頂けないでしょうか。

A 02: 生体から採取された後は速やかにホルマリン固定されることが望ましい。しかし、実際には数時間から一晩まで放置されたのちにホルマリン固定されても診断業 務が行われている。これは、放置された間に生じた変性があってもHE染色による観察が可能な場合である。乾燥や腐敗が生じるとHE染色による観察が著しく 困難になる。従って、放置する場合においても、乾燥や腐敗を防ぐために、湿ったガーゼで組織を覆ったり、低温で組織を保存する必要がある。一般的には、 湿ったガーゼで覆い冷蔵庫保存すれば、一晩程度は許容されている。しかしながら、これらの放置は、速やかな固定が困難な場合に次善の策としてとられるもの であり、速やかに固定された組織では、放置による変性が少なく、詳細な観察に適している。
詳しくは、清水委員作成参考資料を参照されたい。

担当:日本病理学会剖検・病理技術委員会 清水秀樹委員、谷山清己委員長

Q 03: 管理濃度が厳しすぎるのでは?

A 03: 病理医、病理技師では、ホルムアルデヒド(FA)に対するアレルギーや化学物質過敏症などの健康障害が時折報告されます。FAは、一般社会の住環境などに おいて厳しく管理されている物質です。私たちは、従来の慣れから軽視しがちですが、FAの有害性を十分理解し、その発散や暴露防止を心がけなければなりま せん。2009年10月1日より「化学物質過敏症」が電子カルテシステムや電子化診療報酬請求書(レセプト)で使われる病名リストに新たに登録されたの で、FAによる障害が保険医療上で扱いやすくなりました。国が公式に化学物質過敏症の存在を認めたのは初めてのことであり、患者は全国で約70万人といわ れています。管理濃度は、安全な職場環境を達成するために私たちにとって必要な基準です。

Q 04: ホルマリン管理に対する費用はどこが負担する?

A 04: 通達「平成20年11月19日基安発第1119001号:労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令 の施行に係わる留意点について」の中で、医療施設のFA対策は病理部門だけに対する法規制や環境改善ではなく、施設全体の法規制、環境改善であることが明 記されています。従って、施設全体の問題として取り組むべきであることは明らかです。また、局所的な対応には比較的安価な経費で可能な場合もあります(病 理学会HP参照)。

Q 05: 作業環境測定のタイミングを教えて下さい。

A 05: ホルマリン固定材料の切り出し作業中に暴露するFA濃度測定は必須です。この作業環境測定は、継続的、反復的に行われるFA関連作業が対象で、半年に一度 行わなければなりません。どの程度から継続的、反復的と判断するのかについては、基本的には、所轄労働基準監督官の判断によります。短時間で非継続性ある いは非反復性のFA関連作業の場合は、作業環境測定の対象外ですが、労働環境を把握する意味では、簡易測定法を用いてでもFA濃度測定して、必要に応じた 改善が望まれます。

Q 06: 剖検室は常時使用する場所ではないので、生検手術材料の切り出し室とは分けて評価して欲しい。

A 06: Q05と関連します。作業環境測定は、常時行うFA関連作業が対象です。常時性とは、「常にFAを使用している」という意味とは別に、「作業頻度は少ない が定期的に使用している」場合を含みます。少ない頻度であっても継続的に使用される剖検室は、常時使用する場所と判断されても間違いとは言えません。FA 法規制は、作業環境を改善する目的で行われるのですから、むしろ積極的に測定して、不備が見つかれば改善する方向に進むべきでしょう。

Q 07: 剖検室の作業環境測定は必要か?

A 07: Q05・06と関連します。法的には、所轄労働基準監督官の判断によります。ホルマリン環流固定を行う場合は、FA使用量が多いので作業環境測定は必須です。

Q 08: ホルマリン規制には罰則罰金があることを、病理学会から各医療施設に通知してもらえないか?

A 08: FA規制の情報は、厚生労働省より日本医師会等に通達として知らされています。また、病理学会HP上でFA規制に対する情報を公開しています。それらをご参照下さい。

Q 09: 施設でのホルマリンに関する意識改革が弱いのだが、どうすればよいか?

A 09: 施設内特定化学物質作業主任者には、病理技師や病理医が選任されるのが望ましく、その主任者が施設内看護師、医師などを対象としたFA対策教育を行って下さい。法的義務、健康被害の実例報告、対策方法などを具体的に紹介すれば、FA対策の必要性が理解されると思います。

Q 10: 作業環境測定の結果、第3区分に分類されても施設内事務方が感心を示さない。

A 10: 事務方が、特定化学物質障害予防規則(法律)を理解する必要があります。50人以上の作業者(職員)がいる施設では、衛生委員会・産業医・衛生管理者の配 置が義務づけられていますので、その人たちと対応を検討するのが一つの方法です。施設長を対象とした罰則があることを具体的に指摘することが有効な場合が あります。各種通達や病理学会HP掲載資料を参考にして下さい。

Q 11: 今回のホルマリン規制は、行政指導に基づいており、病理医が主体となって行う医療業務ではないのではないか?
A 11: その通りです。本件は、事業主(施設長)から、「病理部門はFA対策をとりなさい」と指示が下るのが本筋です。しかし、残念ながら、医療機関における労働 安全と衛生に対する体制は、一般社会と比較して30年以上遅れているのが現状であり、FA規制に対して理解が足りない事業主(施設長)が病理医の上司と なっている場合があるかもしれません。今回の法改正は、病理医・病理技師が、職場労働環境改善や施設内職員の健康管理に対して今まで以上に関心を持ち、そ れらを改善するチャンスと考えるべきです。