第3部の根拠となる実証解析データ

[実証データ ⑧] 過固定のゲノムDNAの品質への影響

  • 合計53症例の大腸癌および子宮体癌手術検体のホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)よりゲノムDNAを抽出、比較Ct法による品質評価を行った。品質基準を満たしたゲノムDNA10ngを用い、半導体シークエンサ Ion PGMを用いてIon AmpliSeqTM Cancer Hotspot Panel v2 (Thermo Fisher)によりアンプリコンシークエンスを行い、癌関連遺伝子変異検索を行った。
  • 比較Ct法はTaqMan® RNaseP Detection Reagent Kit (Thermo Fisher)およびTaqMan® MGB遺伝子発現Kit (Thermo Fisher) を用いて行った。short amplicon (86 bp) /long amplicon (256 bp)のCt値の相対値比(QC値)は平均0.82で、94%の検体(50症例)がThermo Fisher社が推奨する品質検証値(QC値)0.2を満たした。QC値を満たしたゲノムDNAからは塩基配列解析に充分な量のライブラリーを合成することができた。
  • QC値が基準を満たした50症例では、平均マップリード数638,661、マップ率93%、平均リード深度2,759が得られ、全症例においてアンプリコンシークエンスによる塩基配列解析が充分実施可能であった。但し,充分なマップリード数,マップ率、リード深度が得られても、ライブラリーを作成する際のPCRでの増幅効率に標的遺伝子間で差が生じていることがあるので、断片化が進んだDNAを解析する際には,この点を充分に注意する必要がある。
    過固定のDNAの品質に対する影響
  • また、ホルマリン固定によるシトシンの脱アミノ反応に基づくアーティファクトを含むC/T置換の頻度は2010年3月以前に採取された検体において高く、2010年4月以降に採取された検体において著減していた (赤色折れ線)。当該施設において2011年3月末日から切り出し日の調整による各臓器の固定時間の短縮を計り、2012年3月末日からは週2回、2013年4月1日からは毎日切り出しを行って、切り出しまでの期間が2-3日となっている。C/T置換の頻度は、経年劣化に加えて固定時間に大きな影響を受けると考えられた。
  • 適切な解析を行うために、原則として1週間を越える過固定は回避すべきであると考えられた (N)