第3部の根拠となる実証解析データ

[実証データ ⑤] ホルマリンを含まない固定液のゲノムDNAの品質への影響

  • 卵巣癌・胃癌・肺癌同一症例の手術検体より、10%中性緩衝ホルマリンで3-5日固定してFFPE標本を作製し、PAXgene Tissue container で4-6時間固定してPFPE標本を作製した。8µm切片2-4枚よりQIAsymphony (Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。
    ホルマリンを含まない固定液のゲノムDNAの品質への影響
    ホルマリンを含まない固定液のゲノムDNAの品質への影響の表
  • ゲノムDNAの品質は概して同等かPFPEの方が良い傾向を示したが、本検討の限りでは統計学的に有意な水準に達しなかった。
  • 次に同じゲノムDNA検体を用いComprehensive Cancer Panel (Qiagen)で癌関連遺伝子変異検索を行ったところ、 FFPEとPFPEのDIN値に明らかな差異を認めない 検体2・3・4においては、検出された変異に明らかな差異を認めなかった。これに対し、FFPEにおいてDIN値が低値である検体1・5・6・7においては、ホルマリン固定によるシトシンの脱アミノ反応に基づくアーティファクトを含むC/T置換の頻度が高く、有意な変異と見なすリード数の閾値を適切に設定する必要があると考えられた。
  • PFPE標本から抽出したゲノムDNAを用い信頼度の高い解析を実施し得るが、FFPE標本においても適切に条件を設定すること等により変異解析等が可能と考えられる。